電車を止めよう――勇気を持って主張したい、3つの理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2020年04月17日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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 消費税を下げろと声高に言う人のほとんどが、この仕組みを分かっていないと思われる。消費税を下げると消費は活発になるかもしれない。しかし、どんなに消費が増えても税収は増えないから、国が給付金のために借りたカネを返す財源にならない。むしろ消費税を上げ、国債の信用を高めて、お金持ちのタンス預金で国債を買ってもらい、その上で低所得層に手厚い給付を行いたい。

 鉄道の話からかなり脱線してしまったけれども、鉄道を止めろ、働けない、給与を国が補償しろ、という順で話をすると、その財源も提案しなければ無責任だと思う。国民にカネをばらまけばインフレになるという見方もあるけれど、この場合は企業が国民に払う給与を国が仮払いする形になるので、市中の金は急激に増えない……はずだ。もっとも、この時に消費されるものは医療関係、生活必需品であり、それらに従事する人は感染リスクのなかで働いているわけで、代金が多少増えてもいい、と個人的には思う。

 それから、国債にカネが集まりすぎると株式市場から国債に資金が移ってしまうというリスクはあるだろう。こちらは申し訳ないけれど私の想像力を超えている。もう少し勉強させていただきたい。というより、ここから先は私のような鉄道コラム屋より政治家の仕事であろう。まずは、鉄道コラム屋が「鉄道を止めろ」と言う。その意味を分かっていただきたい。

2011年9月「国土交通政策研究第100号 通勤時の新型インフルエンザ対策に関する調査研究(首都圏)」。シミュレーションの結果、各想定のピーク時有病率を比較すると、運行本数を半減し乗客数を抑制した場合が最も有病者数を抑えられた。11年にこの資料が作成されていたことを、私たちはもっと早く知っておくべきだった(出典:国土交通省

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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