電車を止めよう――勇気を持って主張したい、3つの理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)

» 2020年04月17日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

国債という借金の担保は「徴税力」

 消費回復のために消費税を廃止しようという考え方もあるけれども、私は反対だ。むしろ消費税は上げるべきだ。そして国債の償還予算に充てる。そもそも税は国の債務の担保である。安易に税額を下げることは国の信用を低くする。税を下げるということは、国債の担保が減ることだ。日本国債を買った外国からの信用も落とす。消費税減額は、国会の入念な審議の元、国民の総意として行う必要がある。政府が臨時に下げていいものではない。

 もう少し詳しく説明する。民間が借金をするときに担保が必要だ。担保は土地が最も分かりやすく、それ以外では売却する価値のあるものになる。国債は国の借金だ。借金をするためには担保が必要で、国も例外ではない。

 では、国の担保は何か。国有地ではない。財産価値がゼロに等しい山林や、相続税代わりに接収した細かい土地ばかり。ごみが埋まっていたから○億円値引きますという土地はめったにない事例だし、それでも国政に必要な資金の担保としては小さすぎる。だからといってないがしろにして良いわけはないけれども。

 国の借金の担保はなにか。一つは国が保有する外国債だ。これは国民の税金で買った国民の財産だ。国民の貯金である。しかし外交の手札でもあり、めったに売れない。分かりやすい担保は将来の収入である。土地を持たない人の担保と同じで、会社勤めだったら給料が見込める。会社の場合、請求書を発行し、売掛金を計上すれば、取引先の信用に応じて担保にしてもらえる。あるいは手形を持っていればそれが担保になる。

 国にとって担保とは、将来の収入、つまり、私たちや企業が納める税金だ。正確には国の徴税力である。これが国内外へ向けて発行する国債の担保になっている。税率を下げることは「収入が減りますけどおカネを貸してください」という話で、そんな話は通らない。

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