電車を止めよう――勇気を持って主張したい、3つの理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)

» 2020年04月17日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

感染しなくても「感染者を運ぶ道具になる」

 東京都では感染経路を追えない事例も取り沙汰された。遊戯施設や、従業員の接待、つまり濃厚接触がある飲食店、風俗営業店にクラスターの疑いがある。娯楽は大事だが感染危険度は高い。これらの店舗に対する厳しい休業要請とその補償が問題となっている。

 しかし、酒を出す、従業員の接待がある、という店の存在は大きい。酒を出す店の客はクルマを運転できないから、列車で帰宅することになる。濃厚接触という意味で、果たして列車は完全に大丈夫だと言えるだろうか。換気している、窓が開いたとはいえ、人の密度は高い。普段より空いているとはいえ乗客は多い。列車内で感染の危険度は低くても、感染者を長距離で運び、感染を拡散させている可能性は大いにある。

 緊急事態宣言の直前、4月6日に産経新聞が「政府がJR東日本などと検討、平日も休日ダイヤ、次に5割程度の減便」と報じた。しかし、翌7日に赤羽国土交通大臣が閣議後の会見でこの報道を否定している。鉄道は社会インフラとして機能させる必要があるし、移動需要が減らないままで減便すれば、かえって混雑度が上がり「3密」につながる。

 「致死率はインフルエンザより少し高い程度、過度に怖がるな」には同感だ。しかし、現実に感染者が増え続ければ致死率を維持しても死者は増えるという理屈だ。すでにパニック的な事件も見聞きする。緊急事態宣言も出され、外出自粛は強化された。食事、食材の購入など生命維持の目的以外では外に出ないほうが、精神的にも健やかだ。

 「症状は出ていなくても、自分が感染していると仮定して行動しよう。人との接触、接近を避けよう」としたとき、列車は適した移動手段だろうか。

 ならばいっそ、緊急事態宣言の間だけでも、電車を止めて感染拡大を防いだほうがいい。すでにほとんどの臨時列車、観光列車は運休している。JR四国やJR北海道、経営危機にある地方鉄道では定期列車の運休も始まっている。学校が休校になれば通学列車が運休になる。電車を走らせれば費用だけかかるし、無自覚な感染者を受け入れ運ぶことになる。

筆者が週ごとにまとめている鉄道イベント情報。最近の情報は運休と減便ばかり(出典:汽車旅のしおり

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