高齢者が楽しむスポーツの代表格だったゲートボールが変わろうとしている。全盛期の1980年代には愛好者が60万人を超えたが、近年は激減。そこで、eスポーツへの参入など、若年層の取り込みに挑み始めた。新型コロナウイルスの感染拡大による競技会の中止など逆風にさらされながらも、一世を風靡(ふうび)した国産スポーツを再び盛り上げようとする関係者の努力に静かな注目が集まっている。
ゲートボールの再生に向けて中心的な役割を担っているのは、愛好者らでつくる全国組織「公益財団法人日本ゲートボール連合」(本部・東京、椎川忍会長)だ。
同連合では2016年に評議員や理事が大幅に交代。椎川会長から「再生プラン」を取りまとめるよう指示が出され、「ゲートボール再生プロジェクト」が始まった。手始めに着手した計画の一つが、若年層への浸透を目的としたスマートフォンアプリ開発だ。同連合の南木恵一理事は「スマホゲームにはビリヤードゲームはあっても、よく似た形式なのにゲートボールがなかった。若者に気軽に触れてもらうには独自開発する必要があった」と振り返る。
とはいえ、ゲーム作りのノウハウはゲートボール連合にはない。そこで南木理事が目を付けたのは、富山県魚津市がゲーム産業振興による地方創生を目的にゲーム作りの人材育成などに取り組む「つくるUOZU プロジェクト」だった。担当する同市の商工観光課に直接問い合わせ、互いに協力ができないか検討を進めた。
19年6月には、同プロジェクトが開催したワークショップで、ゲートボールをテーマにしたゲームの作成を課題に据え、参加した社会人や学生に複数のアプリを作成してもらうことができた。その中で最も高い評価を受けたのが、「かずひこ」氏ら6人が開発した「破壊!VRゲートボール」という作品。ゲートボールの球で街を破壊しながら進むアクションゲームだった。
かずひこ氏は続編として「動物ゲートボールバトル!」も制作。日本ゲートボール連合は、財政的な面も含めて開発を支援する方針だ。順調に開発が進めば、21年春にも正式版のゲームアプリが完成する。Google PlayやApp Storeにアップロードされ、一般ユーザーも利用できるようになる見通しだ。
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