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コロナ危機が日本企業の非合理な“ムラ社会”を確実に破壊する訳“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2020年05月13日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

「コロナで一律給付」は戦後日本の転換点

 今回のコロナ危機では、政府は当初、国民に対する直接的な現金給付について検討しなかった。それは政府関係者の中に企業を救済するという感覚はあっても、国民を直接支援するという認識がなかったからである。唯一の例外的な施策であった、2009年に景気対策で施行された定額給付金の評判が悪かったという過去のトラウマもあった。

 直接給付を頑(かたく)なに拒む政府のスタンスに国民が激怒。あまりの批判の大きさに、政府は一転して現金の一律給付を決定したが、筆者は、一連の出来事が戦後日本社会における一大転換点であると見ている。

photo 新型コロナを受けた特別定額給付金のサイト(総務省の公式ページから引用)

 以前の日本社会であれば、こうした現金給付については、国民の側からもバラマキとの批判が出た可能性が高い。ところが今回は、直接支援を求める声が圧倒的に多かった。コロナ危機による経済的影響が極めて大きいということもあるだろうが、大多数の会社員はまだ直接的に雇用が脅かされている状況ではない。

 それにもかかわらず、こうした声が強く出てきたのは、もはや多くの労働者が「自分が勤務する会社は、自分の生活を守ってくれない」と考え始めたからに他ならない。

コロナ受け希望退職加速も

 コロナ危機のためほとんど話題にも上っていないが、今年の春闘では、経団連が日本型雇用の見直しを議題として取り上げる方針を示していた。つまり企業側は、すでに終身雇用や年功序列の賃金体系を放棄する意向を示しているのだ。

 コロナ危機の影響が長期化するのはほぼ確実であり、とりあえず当面の感染拡大が一段落したタイミングで、多くの企業が希望退職など雇用調整に乗り出す可能性が高い。日本型雇用は実質的に終焉していたが、コロナ危機がその動きを加速させるだろう。

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