ドイツはどうやって「2日」で助成金支払いを実現したのか? 開発元銀行インタビュー迅速なシステム構築の裏側に迫る(6/7 ページ)

» 2020年05月14日 07時04分 公開
[Masataka KodukaITmedia]

――一体どのように、支給可否を審査したのでしょうか? 申請のための入力項目には、納税者番号と銀行口座番号がありました。特に他の情報は提供しなかったので、納税者番号と銀行口座番号を用いて、税務署のDBや、銀行のDBにAPIアクセスして詐欺かどうかをチェックするシステムなのではないかと想像していますが、実際どうなのでしょう?

ホルトカンプ氏 言うまでもなく、申請書を提出するときに必要な全情報は、嘘(うそ)であってはなりません。5月23日以降、コロナ助成金の全受領者に対して、税務署に提出するための証明書がメール配信され、全員に再度詳細を確認する機会が与えられています。

 税務署や連邦および州の監査事務所などを通じて、事後審査が行われます。EU当局も検査権を持っています。申請書に意図的に誤った情報が含まれている場合、補助金詐欺罪となる可能性があります。これらの行為は、懲役5年までの詐欺罪、または罰金で罰せられます。最終的な判決はもちろん法廷に任されます。

IBBのWebサイト。5月12日時点、Soforthilfe IVの受付が開始している

――送金件数が多かったと思います。その業務は、IBBの通常業務フローに影響しませんでしたか?

ホルトカンプ氏 はい、そのとおりでした。夜勤を含むIBBのほぼすべての従業員が、コロナ援助業務にかかりきりでした。このため、ここ5週間、他のビジネス開発プログラムの申し込みがあったのですが、5月1日まではそれらのプロジェクトを中断せざるを得ませんでした。

――重複支給などを防ぐ仕組みはあるのですか?

ホルトカンプ氏 申請ツールには、IBAN情報(国際標準銀行口座コード)や納税者番号などを用いて、重複を特定できる自動チェックメカニズムがいくつか実装されています。加えて、念入りに人手によるテストも行いました。

――受取人側の銀行からのデータのフィードバックはあるのでしょうか? 例えば、口座が存在しないなどの受け取りエラー、あるいは、既に受け取り済みであるなどが分かるのでしょうか?

ホルトカンプ氏 IBBのシステムでも独自のチェック処理が実行されますが、受領銀行システムとの連携は非常に優れています。ちなみにこれは、コロナ危機時の連携に限った話ではありません。さらに、商業銀行は、マネーロンダリングなど不正行為に対するチェック処理の実装が法的に義務付けられているため、口座および金銭の動きに疑いのある不正行為を非常に注意深く監視しています。

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