超スピード承認のレムデシビルはコロナに効くのか?
新型コロナウイルス治療薬の登場が期待される中、5月7日に抗ウイルス薬のレムデシビルが日本で「特例承認」された。
通常、医薬品は承認されるまで1〜2年はかかるが、レムデシビルは申請からわずか3日での承認だ。異例ともいえる超スピードで承認されたレムデシビルだが、未解明の新型コロナウイルスに対して、どのような基準で効くと判断されたのか。米中でレムデシビルの治験が行われたが、結果が効く、効かないで正反対だったと報じられている。
レムデシビルは新型コロナに効くのか、なぜ米中の治験で異なる結果が出たのか。そもそも薬が効くとはどういう状況なのか、医薬品開発に携わる薬剤師として考えてみたい。
※特例承認……海外で販売されている日本国内で未承認の新薬を、簡略化した手続きで承認すること。
※治験……新薬が安全で効果があるか販売前に行われる試験のこと。
もともと、レムデシビルはエボラ出血熱の薬として開発中の段階で、どの国でも承認されていない薬だった。
先日「期待のアビガンが簡単に処方できない理由」という記事で書いたが、新型コロナの特効薬として期待されているアビガンも、元々は新型インフルエンザの薬だ。新型コロナの薬として開発されたものではなく、その副作用から厳重な取り扱いが求められている薬である。
レムデシビルは、この薬を開発した米国の製薬会社、ギリアド社の試験で新型コロナウイルスの患者に試したところ効果が確認され、候補薬に挙がるようになった。2月24日、中国を視察した世界保健機関(WHO)の担当者が、「現時点で本当に治療効果があるとみられる唯一の薬」と発言したことで期待は高まり、多くの治験が開始された。
しかし4月29日に米国と中国から出された臨床試験結果は正反対だ。「回復が早まった」とする米国に対し、中国では「効果は確認できなかった」とされた。これは日本国内のメディアでもすでに多数報じられている。なぜこのようなことが起きたのか。
薬は効くか効かないか2つに1つ、白黒はっきりするものではないのか? と不思議に思うかもしれない。この治験結果の違いから見えてくるのは、「薬が効いた」と判断する基準と、その基準の決め方の難しさだ。
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