コロナに苦しむ飲食店の“救済”に格差 カリスマシェフが指摘する重大問題長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/6 ページ)

» 2020年05月19日 08時58分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

「3店以上」が経営難に陥る可能性

 与党案は、売り上げが前年より5割以上か、3カ月平均で3割以上減った中小企業に対して、月50万円、個人事業主なら月25万円を上限に、家賃の3分の2を支給するのが骨子。家賃に地域差があるので、自治体に予算を付け、足りない分を補完する。

 松田氏は「与党案だと、1〜2店を経営している個人事業主なら救済されるでしょう。しかし、3店以上を出しているところは厳しいです。1企業ではなく、1店につきなら、まだ分かるのですが……」と顔を曇らせる。

 国の支援は、手続が面倒過ぎるうえに審査に時間がかかり、給付も遅すぎるものの、持続化給付金や雇用調整助成金などがある。

 持続化給付金は、ひと月の前年同月比の売り上げが50%以上減少している中小の法人に対して200万円、個人事業主に100万円を支給するものだ。

 また、雇用調整助成金は、雇用主が雇用を維持した場合に、休業手当の費用を助成する制度。緊急対応期間として4〜6月は、売り上げなどが直近1カ月5%以上低下していることを条件に、パート、アルバイトも含めた。1日1人あたり8330円を上限(1万5000円に引き上げられる見込み)に、中小企業は5分の4、大企業は3分の2を助成する。解雇しなかった場合は、中小企業が10分の9(特定の条件を満たせば全額)、大企業は4分の3に引き上げられる。

 さらに、自治体によって異なるが、東京都には感染拡大防止協力金があり、都の要請に応じて休業や時短に取り組んだ中小事業者は、1店を経営していれば50万円、2店以上は100万円が支給される。

 これらを組み合わせれば、2店まで経営している場合には、十分ではないかというのが松田氏の見立てだ。しかし、3店以上のチェーンの経営難は免れられない。

 エッグスンシングスの場合、店舗の大半は商業施設に入っている。商業施設が休業していれば店を開けられず売り上げはゼロだ。4月に関しては、多少テークアウトやデリバリーの需要があったが、前年比で9割もの売り上げを失ってしまった。

 原宿の本店は路面店だが、新しい生活様式に従って、店内1階の卓数を8から2に減らすなどして、テーブル間の距離を広く取るように変えた。さばける人数が限られており、行列ができても、もとの売り上げを取り戻すのは、非常に難しい。

 「都心部の場合、1カ月の家賃が300万〜400万円もざらで、与党案で押し切られては、支援金をもらっても焼け石に水だ」と、松田氏は困惑している。

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