――とはいえ、長く染みついた「出社して働く」という習慣は、特に管理する側であるマネジャーや経営層の間で強固のようにも思えます。
比嘉: 変化することへの抵抗感は当然、あるだろう。特に、マネジャー側が部下を信用していないのが一番の問題だ。「見えていない部下はサボっているのではないか」と思ってしまうのは、管理職のマネジメントスキルの欠如だろう。
コロナ騒動以前から、テレワーカーを“監視”することのできるツールはいくつかあった。ただ、コロナ後もテレワーク継続を考えている経営者に聞くと、皆「監視ツールはNG」だと答えている。「あなたを信用していない」ということになり、部下との信頼構築を妨げるからだ。特に、こうしたツールで部下を「一方的に見る」という点が良くない。コミュニケーションは双方向であるべきだろう。
要は、成果に応じた評価制度ができていればそんなツールも必要ないと言える。単純にオフィスから自宅に働く場所を変えただけだからだ。一方で、ワーカー(部下)側も「見られていなくても成果物を出す」意識が無いと、今後はプロの働き手とは言えなくなるだろう。
――テレワークはもともと、今回のような企業の緊急時の対処法というより、「働き方改革の目玉」でした。政府が旗を振りつつも、なかなか浸透しなかった手法です。むしろコロナ後に、企業や働き手の“本気度”が問われそうですね。
比嘉: コロナ騒動はいずれ終息する。しかしその後も、騒動前から日本企業や社会が抱えていた問題は何一つ変わっていない、ということが判明するだろう。人手不足やイノベーション力、超少子高齢化といったテーマだ。むしろコロナ後にこれらが悪化する可能性もある。そうした状況に向けて、企業も社会も「テレワークという働き方は必要なものである」と、再認識すべきなのではないか。
例えば、前から言われているのが「就労人口におけるフリーランスの割合」問題だ。米国では2030年に60%に達するという試算もある。日本はもう少し遅れるかもしれないが、いずれフリーランスが過半数を占めるだろう。
米国の事例を見ると、彼らの多くは「オンラインワーカー」、つまりはテレワーカーだ。こうした働き手が増えていくのは世界的な潮流と言える。日本でも、会社としてテレワーカーをちゃんとマネジメントできるかどうかが必須の能力になるだろう。この流れを日本だけが止めてしまうと、国際的な競争に負けることになる。
もし今回のコロナを機にテレワークのムーブメントが日本で起きなかったとしても、5〜6年は今のままでお茶を濁せるかもしれない。ただ10年単位で見れば、改革できなかった会社は淘汰されていくだろう。大半を占めるオンラインワーカーを管理できず、(就職市場でも)優秀な人材ほどそうした企業を見限るからだ。テレワークのムーブメントは今起きなくとも、10年スパンでは不可避なのではないか。
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