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IT業界の「多重下請け問題」を変える真の方法とは? 1次請けから3次請けまで経験した社長が提唱する「0次請け」「IT後進国ニッポン」の病巣に迫る【後編】(2/4 ページ)

» 2020年06月05日 07時15分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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1次請けから3次請けまで経験

――0次請けで業界の構造を変えようと思ったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

高井氏:私は最初に起業した会社が失敗して、拾ってもらえたのがたまたまこの業界の3次請けの会社でした。大学は理系だったので、同じゼミにいた同級生たちは全員システムエンジニアになって、1次請け、2次請けで働いていました。話を聞いていて、エンジニアは誇りを持って働ける職業だと感じていました。ところが、3次請けの会社に入ってみて、びっくりしました。まず、エンジニアがプロジェクトに行かないのです。

――行かないというのは、どういうことですか。

高井氏:「何月から何月までは、この業務に就きます」と会社間で契約しているにもかかわらず、エンジニアが行かなくなるのです。「このプロジェクトでは(自分が)スキルアップできないので」と言って平気で行かなくなる人もいれば、引きこもってしまう人もいます。

 それは「エンジニアが悪いのだろう」と思っていたら、そうではありませんでした。プロジェクトの内容を見てみると、作るものが何も決まっていないのに「とりあえず作れ」と言われるのです。前編(IT業界の「多重下請け地獄」が横行し続ける真の理由)では、「1次請け」が作るものを取りまとめていると話しましたが、実際にはまとまってなかったり、実現性が低いシステム要件でまとまってしまっていたりすることが多いのが実情です。さらに管理者がいないので、エンジニアを正しく評価する仕組みもありません。

 優秀なエンジニアほど生産性は高くなります。生産性が低いエンジニアとの仕事量の差は、数十倍から百倍ほど開く場合もあります。評価されないのに、たくさん仕事をさせられたら体を壊しますよね。だから優秀な人ほど、自分の身を守るために行かなくなるのです。その状況を実際に見たときに、これは構造自体が悪いと感じました。

――そこからどのようにして、ギャップを埋めていったのでしょうか。

高井氏:私は当時、3次請けの営業だったので、自分が所属している会社を2次請けに引き上げようと考えて営業をしました。実際に2次請けになってみると、納品責任を負わなければならず、1次請けとあまり変わらないことに気付きました。そこで、営業の立場で1次請けに引き上げたこともあります。つまり、1次請け、2次請け、3次請けを経験しています。

 全て経験して気付いたのは、1次、2次、3次請けの人たちも、発注元の企業も、まったく悪気はないということです。多重下請け構造が出来上がっているので、その構造で発注をしていただけです。だから、0次請けという新しい業界構造を作らなければいけないと感じました。そのために新たに立ち上げたのが当社です。

phot 業界の構造図。2次請け以上を主な売り上げとして計上できる企業は1〜2%しかない

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