副業の優等生、JR九州が放置した「傾斜マンション」の罪杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2020年06月05日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 しかし、引き渡してから2年ほどの間に、壁面のひび割れが相次ぐ。施工会社はその都度修理で対応した。そのうちに壁と天井に隙間ができる、玄関ドアが閉まらないなど、建物の歪(ゆが)みが疑われた。構造欠陥問題だとして住民の訴えが続いていた。

 この問題については、現地の報道機関が詳しく報じている。

 また、福岡市の企業情報サイト「NETIB-NEWS」が詳しく追っているので、こちらでは簡単な説明にとどめる。マンション問題として知りたい方はリンク先を参照されたい。

 1997年にマンション管理組合は屋内外の被疑カ所について住人に対してアンケート調査を実施した。同年10月、管理組合として全体集会を開いて協議し、販売側へ問題提起。しかし、施工会社、販売会社ともに構造物の瑕疵は否定した。

 25年にわたり、住民が瑕疵を指摘し続け、費用負担してまで調査するなどの交渉が続くも、施工会社、販売会社ともに2005年の福岡県西方沖地震、16年の熊本地震の影響などと回答したという。時系列も合わない上に、不具合は同じ敷地の7棟のうち6番館だけだから説明がつかない。25年も経てば住み替える人も出てくるわけで、中古物件を仲介した不動産屋が買主に瑕疵を説明しなかったなどの二次被害も生まれている。

 19年12月にこの問題がテレビニュースで報じられ、さらに調査した結果、杭の長さが足りないことが判明し謝罪することになった。ただし「NETIB-NEWS」では、他の棟も「構造スリットを施工しない」という手抜き工事が指摘されている。上記の福岡県民新聞では「建築工事中に初期沈下を起こしており、造作工事で調整している跡がある」とし、当初から傾斜を知りつつ販売したという疑惑もある。

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