クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2020年06月08日 07時00分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:新型ハリアーはトヨタの新たな到達点 (3/6)

[池田直渡,ITmedia]

しっかりした全体像

 まずはそれが最も顕著に現れるデザインの話から入ろう。ボディ全体のシェープは、RAV4と比べると、全く文法が違う。まずルーフを水平に引かない。後ろ下がりのクーペ的ラインを引き、側面も後方で絞り込んで、輪切りにした時の断面積が後方に行くほど小さくなっていく形にした。実用性を多少削ってでも流麗な方向を目指している。当然ラゲッジの容量はRAV4に劣るが、やせ我慢のないところに高級はない。その見切りがうまい。

新型ハリアーのサイドビュー

 側面からはプレスによるキャラクターラインを排除して、面の抑揚だけでハイライトを作った。いわゆるプレスのキャラクターラインとは強制的な抑揚であり、鼻の横に影を付けて鼻が高く見えるようにするメイクアップと同じ。テクニックではあるが本質ではない。抑揚そのものによって造形を正しく見せられるなら、つまらないうそは付かない方がいいし、すっぴんで美しいといわせてこそ本物である。

 フロントフェンダー上端付近からスタートした抑揚の凸面は、ドアハンドル上を尻上がりのウェッジを描いて上がっていき、テールレンズの上でリヤをぐるりと回り込んで反対側へとつながっていく。巧みなのは、そこでしっかりリヤボディの絞り込みをなだらかな連続感として見せていることで、部分要素でデザインしていてはこうはならない。最初から全体像がしっかりイメージされているからこそ作り得る形である。

 サイドウィンドーは、クーペ的ルーフラインにシンクロすべくアーチ型であり、そのアーチだけを見せるために上端のみにメッキのトリムを流し、途中のピラーは黒塗りをして消す。当然窓の縦横比は圧倒的に横長になって、スムーズでスピード感のあるデザインになる。

 先ほど触れたテールレンズは、車両の後端でこのスピード感を殺さないように薄く長い造形にして、リヤデザインにも軽く流麗なイメージを演出している。面の回り込みのさらに外側からボディをはみ出してレンズを回り込ませることで、目の錯覚を利用してワイド&ローな見え方を作り出す。

リヤデザイン

 ついでにいえば、リヤバンパー下のガーニッシュと、リヤからサイドまで回り込むブラックの樹脂パーツで、塗装面の上下幅を削り、ボディ全体を薄く見せると同時に、リヤビューが重たくなりすぎないように調整をかけている。要するにウェッジシェープのサイドビューで、リヤウインドー下端のラインが上がって上下に長くなり、さらに絞り込みによって横幅が減った結果、後ろ姿のアスペクトレシオは正方形に近づく。リヤビューをワイド&ローに見せ、サイドビューはロング&ローに見せるためにさまざまな技法を駆使しているのだ。

 フロントドア下から立ち上がりリヤフェンダー付近を複雑に隆起させる面構成は、少しトヨタらしい。ボディ全幅の制限もあるのだろうが、ここの抑揚はもう少し下品で派手にした方が、欲望を刺激すると思う。筆者もいえた義理ではないが、エロ系の才能というかイマジネーションが残念ながら足りない。

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