クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2020年06月08日 07時00分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:新型ハリアーはトヨタの新たな到達点 (2/6)

[池田直渡,ITmedia]

 まずは、RAV4だ。リヤまで水平にルーフを伸ばし、側面も後方で絞り込まないスクエアなシェイプで、大容量の荷室を確保した。そういう箱感を重視したボディシェイプへのマッチングを考慮して、デザインのテイストはラギッドな方向へ振った。良い意味でおもちゃっぽい造形を内外装に散りばめ、そういう道具感を重視したルックスにふさわしい走破性を与えるために、三種類もの四輪駆動システムを用意して、オフロード走行側の守備範囲を拡大した。あらゆる意味で、道具としての徹底感がある。そして下は266万円からと価格も安い。

ヒットしたRAV4は、新たにPHVモデルが登場する

 バリエーションの2つめは、北米市場をターゲットにしたハイランダーで、これは基本RAV4の相似拡大形である。ボディを伸ばして3列シートにした。デザインはファミリー需要に向けて、RAV4と共通の基本ながら少しコンサバにまとめられた。もちろんキャラクターの違いに伴う各部の調整は、念入りに取ってあるのだろうが、エンジニアリングの目的は最初から明瞭。RAV4の多人数乗り。とても分かりやすい。そしてSUVバリエーションの最後のピースがハリアーである。

マークIIの受け皿としてのSUV

 多少純度の差はあれど、前の2台が道具性を重じて、ラギッドな方向で打ち出したのだとしたら、SUVというジャンルの幅の中で、正反対なキャラクターを狙わなくてはならない。チーフエンジニアの言い分では、「SUVの否定」だと言う。SUVからSUVらしい要素を剥(は)ぎ取って、しかしそれを埋め合わせるサムシングエルスを補完しなくては成立しない。おそらくそれは乗用車に近い領域だ。

 そこの部分の難しさは、エンジニアリングファクターでは何も決められないというところにある。大事なのは高級で上質な移動空間としてのSUVに仕立てることであり、それは一体何をどうすればいいのかは、ソフトウェア的というか、文化論的仕事になってしまう。

 クルマ好きな人に分かりやすくいえば、マークII/マークXが担ってきたハイソなセダンの流れをSUVで引き受けるにはどうしたらいいのかということでもある。しかも上にはレクサスがあって、高級も中くらいに収めなくてはならない。その課題が難しいのは、トヨタ自身がマークXでそれを全く果たせておらず、「プチ高級」を目指しながら、引き算をしすぎて空っぽに成り果てていたことからも分かる。

 結論からいえば、新型ハリアーは、多面的なその調律に成功し、トヨタブランドの範疇(はんちゅう)の高級というものが、バラバラの要素ではなく、一つの方向にキチンと収斂(しゅうれん)して、なるほどと思わせるものになっていた。

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