クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2020年06月08日 07時00分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:新型ハリアーはトヨタの新たな到達点 (5/6)

[池田直渡,ITmedia]

ハリアーの走り

 さて、そのクルマは走るとどうなのか? これで走った印象が「ザ・昭和の母」だったら、ギャップに萌(も)えてもらうしかないが、ありがたいことに、そういうものではなかった。ただし今回乗ったのはプロトタイプであり、市販と違う部分があるかもしれないことには留意いただきたい。

 そしてサーキット試乗なので、こういうクルマ。しかもソフトウェア的というか、文化論方面の仕上がりをチェックするには相応しいとはいえない場所だが、それでもクルマである以上、どこかで緊急事態回避の運動性が求められる可能性は消えないので、こういう機会は重要なチェックの場である。

 シートに座ると流石にこのサイズだけあってペダルのオフセットはない。シートポジションも出しやすく、変にタイトでないのに支えるべきところは支えられている。驚くような凄(すご)みはないが、気にならない良いシートだと思う。頭の位置は、車両内の空間に対して違和感の無い位置に収まるし、その位置でステアリングもピタッと来る場所に調整できる。ドライブポジションはちゃんとしている。

 ただし、リヤシートは少し微妙。わずかにトルソアングルが寝ている。あれで座面が前上がりになっていれば文句はないのだが、座面が完全にフラットだ。あの座面ならトルソアングルはもう少し立っていなくてはならない。ただ、高級な乗用車としてのSUVであれば、後席の乗員がブレーキの度に足を踏ん張って体を支えなくて済むように、座面の後傾角を付ける方が望ましいと思う。

 トヨタは事前の説明でハリヤーの走りを「MIYABI(雅)なものにしたかった」と言った。その時は「ふーん」と聞いていたが、走り出しでアクセルを踏んだ時のタイヤひと転がり目の身ごなしから、その雅は感じ取れた。重たい車体をコーナーに放り込んで、ステアリングを切っていくと、足がたおやかに動いて漸進的に踏ん張っていく筋肉質な感じが極めて好印象だった。いわゆるアシが動きながら、踏ん張ってロール速度を滑らかに止めてくれる安心感がある。良いクルマらしい動きが見て取れる。

 速度を上げて行っても怖くない。この種のクルマが本来的に得意としないサーキット走行でも、ドライバーが手に汗握らずに済む。重心は当然高いので、それなりにロールをするのだが、それを無理に止めようとしない自然なセッティングだと思う。

 ちなみに途中で担当編集に運転を代わって、彼がアプローチ速度を見誤って突っ込み過ぎるというケースが何度かあったけれど、進入でアンダーが出ても、スクラブ抵抗で速度が落ちれば、フロントの舵(かじ)が帰ってくる。よほどとんでもない速度の読み間違いがなければ、ただ切り直せば大丈夫だ。基本的な素養はリヤサスが踏ん張ってアンダー方向に躾(しつ)ける仕立てだから、付き過ぎたヨーで振り返される挙動は出にくい。車重が重いとそれは助かる。

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