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» 2020年06月10日 07時00分 公開

アフターコロナは「試すチャンス」?:なぜ、マーケティングでAIが注目されているのか (1/3)

コロナの影響による経済の停滞を受け、IT大手のGoogleですらマーケティング予算を大幅に削ろうとしている。この流れはマーケティングのさらなる効率化を促す要因となるかもしれない。そこで今あらためて注目を浴びているのが、AI(人工知能)だ。

[小林啓倫,ITmedia]

 2020年4月、Googleがマーケティング予算を50%削減するという衝撃的なニュースが流れた。新型コロナウイルスの感染拡大による経済の停滞を受け、予算の見直しを行うとともに、採用も抑制する計画という。IT大手のGoogleですらマーケティング予算を大幅に削る判断を下した以上、今後他の業界や他社でも、同じ流れが生まれることは避けられないだろう。

 しかしこの流れは、逆にマーケティングのさらなる効率化を促す要因となるかもしれない。それを実現するテクノロジーとして、今あらためて注目を浴びているのが、AI(人工知能)だ。

データの爆発が促すAI導入

 今さまざまな場面で「AI」という言葉が使われており、ベンダーが提供する製品の中身も千差万別だが、一定量のデータを機械に与えることで、機械が自らその中にあるパターンを見いだす「機械学習」を応用したものが多い。それによって、機械が自律的に不正を検知したり、自動車を運転したり、人間のようにコミュニケーションしたりするといった世界が現実のものになっている。

photo 写真はイメージです

 とはいえ、まだ自動運転車がタクシードライバーから仕事を奪っていないように、熟練のマーケターに取って代わるような万能のAIが登場しているわけではない。またマーケティングの効率化に関していえば、既に優秀なCRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)やSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)などのツールが登場している。なぜ、マーケティングの分野でもAIに注目が集まっているのだろうか。

 その背景にあるのが、データの爆発的な増加だ。もちろん2010年代からビッグデータへの注目が高まっていたように、データ量の拡大は今に始まった話ではない。しかしその流れは加速度的に進んでおり、爆発的とも呼べる事態となっている。調査会社のIDCが発表した最新のレポートによれば、20年に全世界で生成されるデータ量は、実に59ゼタバイト(ZB)に達すると予測されている。さらに今後3年間で生成されるデータ量は、過去30年間に生成された量よりも多くなるそうだ。

 IDCはその理由の一つとして、新型コロナウイルスの感染拡大を挙げている。都市のロックダウンや外出自粛により、テレワークやオンライン授業の利用が増え、データ量の増加に貢献しているわけである。今までオフラインで行っていた作業をオンラインに変えていこうとする流れは、いわゆる「アフターコロナ」や「ウィズコロナ」の世界でも続くだろう。

 さらにここ数年、ビジネスの世界では、あらゆる業務をデジタル化してビジネスを変えてゆこうという動きが拡大している。それが「デジタルトランスフォーメーション」(Digital Transformation、デジタル技術による変革)だ。DXと略されることも多いこの言葉は、単にクラウドやAIを導入するだけと誤解されてしまうことも多いが、幅広い領域や複数の技術を組み合わせた変革を模索する、より大きな変化を促す概念である。

 先ほどと同じIDCのレポートでは、DXに対する全世界での支出が、23年までに実に5.3兆ドルに達すると予測している。20年度のパブリッククラウドの世界市場が、約2600億ドルになると予測されていることを考えると、これがいかに大きな動きか分かるだろう。今後あらゆる業務がデジタル化されれば、それだけデータを生み出し、データで分析や支援のできる業務が増えることになる。

 しかしデータ量が増えれば、それだけ扱うのも難しくなる。またビジネスに求められるスピードは年々加速しており、マーケティングの世界でも、データをリアルタイムに分析し、その結果を受けて即座にアクションを起こすことが要求されている。それに対応するのは、もはや人間の力だけでは不可能――そこでAIに支援させようという機運が高まっているのだ。

 実際に、ミック経済研究所が19年に発表した国内ビジネス・アナリティクス市場のレポートによれば、18年度の同市場規模は前年比13.6%増の2978億円で、26年度までの期間平均成長率は13.8%に達するとしている。同社は、その理由として「AI/ディープラーニングの活用が成長をけん引する」と説明している。

コンタクトポイントでもAIが活躍

 AIがマーケティングに貢献するのは、データ分析の領域だけではない。顧客との接点、つまりコンタクトポイントにおいてもさまざまな形でAIが活用されようとしている。

 最も分かりやすい例は、顧客に対するメッセージのパーソナライズだろう。これまでもマーケティングでは、属性やセグメントなどに基づいて一定のパターンを見いだし、顧客に提示する内容を調整してきた。しかし人間の手によるパターン化やルール化では、どうしても調整できる内容や、対応できる範囲に制限がある。こうした部分をAIに任せることで、顧客の反応を予測し、それらに基づいて「ハイパーパーソナライズ」されたコンテンツを、顧客一人一人という単位で(しかも大規模な形で)生成することが可能になっている。

 またコンタクトポイントでは、データではない、生身の人間とのコミュニケーションが発生するが、ここでもAIがその力を発揮している。これまで人と人のインタラクションが発生する場面は、機械では置き換えられないタスクだと考えられてきたが、AIはそうした常識までくつがえそうとしている。

 契機の一つとなったのが、18年のGoogleによる「Duplex」技術の公開だ。

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