新型車投入の横須賀線、“通勤電車ではなかった”歴史と「車両交代」の意味杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2020年06月19日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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電車も通勤仕様へ変わっていく

 そうなると、もはや横須賀線・新横須賀線は通勤路線だ。ただし、電車は片側3扉セミクロスシートの113系電車が継続された。

 東海道本線では1985年から新型車両211系を導入した。座席は113系を踏襲した片側3扉セミクロスシート車両で、増結用車両はロングシートだった。しかし混雑が深刻になったため、国鉄分割民営化後の1989年からロングシート車両を増やした。

1980年代に導入された「211系」(出典:JR東日本

 横須賀線も211系が導入されるかと思われたけれど、意外にも実質的に横須賀線専用車両となるE217系が誕生する。211系の片側3扉ではなく、片側4扉で乗降性を重視。11両編成時は3両が一部クロスシートの近郊型座席配置、6両がオールロングシートの通勤型、2両がグリーン車だ。混雑時はロングシート仕様の4両編成が増結される。

 クロスシートは長距離普通列車向け、ロングシートは通勤電車向け、と考えれば、横須賀線から少しずつクロスシートが減っていったことが分かる。そして新型のE235系はグリーン車を除きロングシートのみとなった。E217系が全てE235系に交代した時点で横須賀線の通勤路線化計画は完了となる。もちろん総武快速線も同様だ。E235系横須賀線版は、東京通勤圏の歴史に記すべき電車といえるだろう。

普通車の座席はロングシートに統一された(出典:JR東日本プレスリリース

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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