コロナ禍で“ぼろ儲け”の億万長者と困窮する労働者 格差大国にみる悲惨な現実世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2020年07月02日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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黒人の新型コロナによる死亡率は3倍

 米疾病管理予防センター(CDC)のデータでは、新型コロナは黒人や中南米系に偏ってダメージを与えており、白人よりも入院率は4.5%も高い。もともと医療費がとにかく高いことで知られる米国で、貧困層は医療費のための保険などには入っておらず、支払いもできないために病院にも行けない。多くの人が健康診断をしていないばかりか、例えば黒人は肥満率が高く、糖尿病や高血圧など基礎疾患を持つ人も多い。そのせいで、新型コロナによる黒人の死亡率は他の人種よりも3倍高いという。

 こうした人たちは、仕事も低賃金労働に就いている人が少なくないし、テレワークができない場合も多い。だが自粛が解除されるにつれ、仕事をしないわけにはいかなくなる。米マサチューセッツ大学アマースト校の研究者の調査では、こうしたエッセンシャルワーカーなどの3分の2は職場でソーシャルディスタンスを守れないとし、医療分野のエッセンシャルワーカーだけを見ても、給料のいい医師や看護師と比べ、低賃金のヘルパーなどは2〜3倍感染しやすい状況にあるという。さらに低賃金の労働者らは、職場での環境が悪いだけでなく、栄養状態も悪いために新型コロナ感染に弱いという。

 リスクのある現場で仕事をして、新型コロナに感染したり感染させたりする可能性も高くなる。そうなると第2波、第3波と感染が続いていくかもしれない。収入がなくなったり減ったりして病院に行けない人が増えることも考えられ、死亡者数が増える可能性も出てくるだろう。

 英LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス)の調査では、収入格差が大きい国ほど新型コロナの感染者数や死亡者数が多いと指摘している。米国はその最たる例だろう。

 一方で、億万長者の数が断然多いのも米国である。ぼろもうけをしているベゾスやゲイツは、新型コロナ対策に多額の寄付をしているが、そういう寄付が必要とされるところにしっかりと割り当てられることを願う。

 日本でもこれから徐々に仕事も元に戻っていくだろうが、米国のケースと同じように、基礎疾患のある人や年配者、またリスクのある仕事に従事している人たちはこれまで同様に注意が必要だろう。まだまだ油断はできないと認識しておいたほうがいい。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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