コロナ禍で“ぼろ儲け”の億万長者と困窮する労働者 格差大国にみる悲惨な現実世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2020年07月02日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

マイノリティーほど深刻な失業率

 もっとも、そうした打撃も、結局は現場で働く従業員たちに大きな影響を及ぼしている。政策研究所で格差問題プログラムのディレクターを務めるチャック・コリンズは米メディアの取材に、「FRB(米連邦準備銀行)が発表した数字では、第1四半期にコロナ禍によって6.5兆ドルの一般家庭の資産が消滅した……億万長者たちが14週間で増やした資産は、コロナ禍によって基本的なサービスを提供できなくなるほど不足している、全米50州で失われた予算の全てを賄うことができる。それほどバランスが取れていない」と語っている。

 米国では現在、マイノリティーを中心に失業率が深刻になっている。例えば5月には、黒人の失業率は16.8%、中南米系は17.6%、アジア系は15%で、白人の12.4%よりも軒並み高かった。新型コロナの感染が拡大してから、少なくとも4500万人が失業手当の申請をしている。

米国ではマイノリティーの失業率が高くなっている

 しかも、米国民で収入が下から半分に入る人たちは、ほとんどの場合、株などを持っておらず、コロナ禍での株高とは無関係だ。しかも下から40%の人たちは、最も失業しやすい層でもある。そもそも米国では、急な400ドルの支出が発生した場合に「対応できない」と答えた世帯が40%に上っているほど、多くの国民の生活は困窮している。それを考えると、新型コロナで働けなくなった人たちが悲惨な状況に陥ったのは言うまでもない。ちなみに米政府は国民に1200ドルを配っているが、なかなか届かないとの苦情も出ている。

 ただ、これは単純に富豪と庶民の間で資産の差が増えたという話に止まらない。新型コロナによる自粛やビジネスがなかなか元どおりにならないという「後遺症」で格差がさらに広がっていく中、その格差がまた新型コロナをさらに蔓延させ、状況を悪化させる可能性があるのだ。

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