“悪者扱い”の誤解解く発言も JR東海社長と静岡県知事の「リニアトップ面談」にツッコミを入れる【前編】杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2020年07月03日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

なぜ静岡工区のことばかり発言するのか

[0:10:50] 静岡工区のことばかり発言する理由

 金子社長は「なぜ南アルプストンネル(静岡工区)に注目するか」を説明した。最も工期が長い区間だからであり、都市部に比べてアクセスルートが1本だけで効率が悪く、時間がかかるからだ。これは後に川勝知事から出る「なぜ静岡ばかりやり玉に挙げるのか」という疑問に対する答えでもある。

[0:14:35] 「途中までできている」の意味

 金子社長は「斜坑を掘らせていただきたい」と発言。斜坑は「トンネル完成後の非常口」か「大井川の水を戻す導水路トンネル」か、その両方か不明だ。いずれにしても「掘る工事」はヤードではなく本体工事の一つだろう。しかも発言の中で「西俣の斜坑は途中までできていますのであと3カ月、千石は場所を決めただけなので、8カ月か9カ月くらいかかる」と発言した。これも分かりにくい。着工を認めていない場所で「途中までできている」とはどういうことか。

 実は今回の着工問題は、着工するか否かではなく、工事範囲を広げるか否か、という話だ。県の自然環境保全協定により、5ヘクタール以上の工事は県と事業者が協定を結ぶ必要がある。いままでは5ヘクタールの範囲内で工事をしつつ、県との協定締結を待っていた。この話は面談の後半で出てくる。この面談は初見では理解しにくい。それにしても「ヤードの範囲を広げたい」とすればいいところを「掘る」と言うからややこしくなる。やっぱり掘るつもりではないか、いや、掘っていたのかと不信感を持たれる。静岡県が公開した現場写真では掘っていないようだ。

争点となっている「ヤード」の位置(地理院地図を加工)
JR東海が許可を求めた工事は桃色と黄色の部分(出典:JR東海「中央新幹線南アルプストンネル静岡工区における工事の準備の内容について」)

[0:15:14] ヤードの視察に見解の差

 西俣ヤードの視察、進捗確認で両者に認識の違いがある。金子社長は「だいぶ仕上がっている」、川勝知事は「跡形もない」だ。川勝知事は19年6月13日に行ったと言う。しかし20年6月は道路環境が悪くて現地にたどり着けず、県の調査隊からの写真を見ている。その写真を見ると、平地が広がっているだけだ。「跡形もない」は建物もないという意味だろうか。金子社長の「だいぶ仕上がっている」は、整地のみを指しているか。両者の共通見解は「西俣ヤードへ行く道が崩れている」。金子社長は月末(6月末)までに直そうとしているという。

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