“悪者扱い”の誤解解く発言も JR東海社長と静岡県知事の「リニアトップ面談」にツッコミを入れる【前編】杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2020年07月03日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

リニアの恩は「ひかり」で返す?

[0:15:50] リニアの恩は「ひかり」で返す?

 金子社長は「トンネルを掘るか掘らないか」と語る。その上で、「掘れば水が出る」、それをどうするかという議論があるから「私たちは掘りません」と明言した。坑口については土を盛って補強し崩れないようにする。そこまでの掘らない部分の「ヤード工事をお認めいただきたい」と続く。本題に切り込んだ。

 さらに、リニアの効果をまた強調し、一緒に一生懸命やっている沿線の人たちと足並みをそろえたい……とまた静岡県を逆なでするようなことを振りつつ、大事なことを付け加えた。東海道新幹線の駅は17駅あり、静岡県には6駅ある。「ひかり」をどう停めよう、どう増やそうと必ずメリットがある。そういう議論はまた別のところで……。

 つまり、リニアの恩恵は東海道新幹線で返すと約束したようなものだ。

[0:20:00] 意味深な牧之原特産品

 ここで、金子社長は出されたお茶に手を出す。すかさず川勝知事は「そのお茶は大井川の水で作られた牧ノ原台地のお茶で、今年は宮中に献上した」と紹介する。このタイミングで、しかも牧之原産だ。

 牧之原といえば大井川の下流。そして富士山静岡空港がある。ここに東海道新幹線の駅を作ってほしいと、静岡県がJR東海に何度も要請し、その都度、JR東海が拒否した経緯がある。その問題を蒸し返すつもりはないだろうけれども、「忘れてはいないだろうね」という、プレッシャーを与える効果はある。

 川勝知事は金子社長の「水問題をおろそかにしない」という発言を「力強い」「安心した」と評し、大井川への思いを語りはじめる。ここが大井川流域10市町と約束した部分だろう。さらに、牧之原市長からの心の結晶だというお茶と、1本10万円以上、プレミアが付いて数十万円という地酒「磯自慢」が紹介される。

 「トンネルを取るか、リニアを取るか、結果は分かっているから、よほど注意しなくちゃいけない」と言いつつ、「リニアには反対していない」と語る。新幹線は日本が技術の国であると世界に知らしめた。これを抜きに日本の経済は成り立たない。リニアの試乗もしたし、全面的に賛成だ。建設予定地も歩いた。その上で「2011年段階で水の問題は知らず、今は恥じている」と告白した。正直だ。

 「リニアも国策、環境を守ることも国策」と川勝知事。その通りだ。金子社長も「リニアを取るか環境を取るか、では収まらない」と語る。リニアが大切だと言うと環境を考えていないのかと言われる、と誤解されたつらさを滲ませた。

「それは牧之原のお茶です」。面談では双方の笑顔も見られた(出典:YouTube

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