なぜ「原価率300%」の料理を出すのか? コロナ後の飲食店に求められる「メニューの会計力」アフターコロナ 仕事はこう変わる(4/5 ページ)

» 2020年07月23日 07時30分 公開
[谷川俊太郎ITmedia]

顧客を開拓する販売促進費

 先日とあるバーに行った時、「17時までに来店されたお客様のチャージ代金半額」と書いたメニューが置いてあった。

 通常は18時からしか開けない店だが、営業時間を長くする日を作り、来店しやすいようにチャージ料を安くしている。これは「普段は開けていない時間帯に試しに来店してもらう」という販売促進費的なやり方といえるだろう。

 「アフリカで靴を売る」話は知っている人も多いだろう。アフリカに行った靴の営業マンが、アフリカの人は誰も靴を履いていないのを見た。「これでは売れるはずがない」と思うか、「誰も履いていないからチャンス」と捉えるか。新たな市場を開拓する心構えの話だ。

 このとき重要なのは、靴を履く文化がない人々にいきなり靴を売りつけるのではなく、試供品を試し履きしてもらうなど、まずは「靴の良さを知ってもらう」ことから始めることだ。

 バーは基本的に夜に行く店だが、昼の顧客を開拓しようと思えば昼の利用の「お試し」が必要だろう。そのためにチャージ料を安くしているのだ。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

 新しくオープンした飲食店が開店から数日間、代金の半分を後日使える割引券の形でキャッシュバック、といった事例もあるが、これは広告宣伝と試供品、両方の合わせ技といった所だろう。

 このように、メニューに「お試し」を入れることで販売促進費的な効果が得られる。

 どれもメニューに原価とは別の「会計的視点」を盛り込んだ例だ。客が少なく売り上げが減って困った、かといって広告にもお金がかかる、これでは何もできない……という状況に陥っているお店は多数あると思う。しかし、会計的視点でメニューを見直すとこれまでとは違った展開ができる。

 このように「広告宣伝費的な視点」「接待交際費的な視点」「販売促進費的な視点」によって、話題を作り、再来店を促し、回転率を上げて来客を促し、顧客を開拓する。ただ値引きをして、利益を圧迫する形で売り上げを増やすのではなく、このように意味のある形で工夫を凝らして値引きをしたりコストをかけたりする、そういった力が「メニューの会計力」だ。

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