メニューに会計的視点を取り入れる事例を紹介してきた。このような考え方が自在に使えるようになれば「メニューの会計力」が高まったといえるだろう。しかし、大事なことを忘れてはいけない。メニューは最終的には利益を出すためにあるということだ。
ラーメン屋を例に考えてみると、材料費を300円、ラーメンの売値を800円とすれば、ラーメン1杯にラーメン店が「付け加えた価値」は500円になる。さらに1カ月あたりラーメンが売れた数を掛ければ、このラーメン店が1カ月で生み出した付加価値の合計額が計算できる。これが多いか少ないかで利益は決まる。
ここで、ラーメン屋の運営に人件費や家賃等のいわゆる固定費が月に50万円かかるとしたら、1杯800円(材料費300円)のラーメンを何杯売らないといけないだろうか。1杯あたり500円の付加価値から上記の経費を支払う場合、50万円 ÷ 500円で月に1000杯売って、やっと赤字でも黒字でもないトントン、つまり損益分岐点となる。
ここで、先程の「会計力」を発揮して、ラーメン1杯に材料費100円の餃子(ぎょうざ)を無料で提供したらどうなるだろうか。ラーメンと餃子のセットで付加価値は400円に減る。すると損益分岐点に必要なラーメンは1250杯に変わる(50万円 ÷ 400円)。餃子を提供する前より25%も多く売る必要が出てくるが、餃子の無料サービスでそれ以上に客数が増えれば損して得取れ、となる。
他にもセットメニューとしてラーメンと餃子にビールを加えた商品にするなど、客単価を上げる施策も考えられる。
どれも当たり前の工夫に見えるかもしれないが、すべての飲食店がこういった工夫を行っているか? 行っていてもまだできることはないか? と考えれば、改善の余地はいくらでもあるだろう。
ただ経費をかけるだけでなく、それ以上の付加価値を得る、つまり利益を出すことが目的だ。ただサービスをすることではなく、利益を出すこと。それがメニューの「会計力」なのである。新型コロナウィルスは飲食店経営に大きな打撃を与えた。しかし嘆いているばかりとはいかない。今の状況下でもできることはある。メニューの会計力を高めてこの苦境を乗り越えたい。
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