新宿駅東西自由通路の開通で、どんな未来が待っているのか東西が、結ばれる(3/3 ページ)

» 2020年07月26日 07時00分 公開
[小林拓矢ITmedia]
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各鉄道事業者と商業施設の「共存共栄」

 新宿駅西口エリアには小田急百貨店や京王百貨店があり、駅から少し離れるとヨドバシカメラ新宿西口本店や、ブックファースト新宿店がある。東口エリアにはルミネエスト新宿があり、駅から離れるとビックロや紀伊國屋書店新宿本店などが充実している。

 双方に優れた商業施設がありながら、東西が分断されていたのでその行き来が難しかった。なぜ、こうした設計になっていたのか。各鉄道事業者が自社の商業施設に鉄道利用者を囲い込む、という側面があったから。そのこと自体は個々の事業者の戦略としては正しいものの、街全体の活性化という観点からは問題があった。

賑わい空間、完成イメージ(出典:JR東日本)

 新宿区や東京都が加わり、街自体の回遊性をどう高めるか、それによって新宿エリアをどう盛り上げるかが検討されるようになった。個々の商業施設が「分断」を利用して囲い込む戦略ではなく、地域全体の「共存共栄」を目指して街をつくっていく文脈の中で、この東西自由通路は生まれた。

 こうした流れの中で、各商業施設はより魅力を増すように、さまざまな計画を練っている。小田急は東京メトロと手を組み、新宿駅西口エリアの再開発を計画している。現在の小田急百貨店14階建てのビルを、高さ260メートル、48階建ての高層ビルに建て替えるという。その際には、JR東日本の新宿駅ホームの上を通るデッキも整備され、同時にルミネエスト新宿の建て替えの可能性も高いと思われる。

 こういった各事業者の経営戦略の中で新宿エリアの活性化は重要な役割を果たしており、その第一歩として新宿駅の東西自由通路ができたのだ。「迷いやすいので、それを改善するため」といった理由だけでなく、地域と鉄道ビジネス全体のことを考えた上で、東西自由通路が誕生したのである。

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