企業が生み出した利益は、従業員の給与や家賃、税金の支払いなどに充てられ、最終的に残った「当期純利益」は配当金か内部留保などに使われる。そしてこれら利益の使途については、人件費に投資するよりも、株主への配当原資や設備投資など「成長資金」という名目にするほうが株主からのウケがよいという事情がある。
現在、日本株の6割以上が、海外ファンドなどの外国人投資家によって売買されているといわれている。事業法人や機関投資家に比べ、海外の投資家は株式の短期売買によって利益獲得を狙うため、株式の平均保有期間が短く、投資先として魅力がないと判断された株式はすぐに売られてしまうリスクがあるとされる。従って「利益を株主に分配しない=ケチな会社」と思われないようにするためにも、企業側では利益を株主に還元する動きを強めているのだ。実際に2000年以降、全ての規模の企業において、配当金の割合は大きく上昇している。
2000年ごろから、日本国内でも「物言う株主」と呼ばれる機関投資家が目立ってきた。彼らは「配当性向が低く、多額の現預金を保有し、かつそのお金を今後の会社の成長にどう投資していくかといったプランを持っていないような企業」の株式を大量に取得し、「使い道のないお金を内部に溜め込むくらいなら、株主に配当で還元すべき!」と会社に迫るのだ。当時、報道でご覧になった方も多いだろう。
利益を株主に配当するにしても、今後に備えて厚めに留保するとしても、利益全体のパイは限られている。その分、販管費などの給与原資が削られていくことになるわけだ。90年代までは配当金の増加に合わせて人件費も増えていたのだが、00年以降は配当金が増える一方で人件費は抑制される流れとなっている。
株主重視の姿勢もよいが、何事もバランスが重要だ。あまりに偏りすぎた姿勢であれば見直し、従業員への還元も必要であろう。
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