クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ダイハツ・タフトのターボが選ばれそうな理由池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2020年08月03日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

ギア感の使い方

 この手のギア感をデザインテーマにしたクルマは、ヒットする印象が強い。三菱のデリカであるとか、トヨタのRAV4とか、おそらく拒否感を抱く人が少ないというか、多くの人にとって受け入れやすいのだと思う。

 ダイハツ側の背景をさらっておこう。タフトの前任モデルは、おそらくキャストということになる。車両の系譜としては全くつながりはないのだが、1車種抜けて1車種入るという選手交代的な状況を見ると、販売現場では後継と見るだろう。

 キャストは、ダイハツの軽自動車ラインアップの中で、男性向けキャラ付加モデルとして位置づけられていたが、忌憚(きたん)のない言い方をすれば失敗モデルとして、静かにフェードアウトという憂き目にあった。二回続けて失敗は許されない。そういう意味では手堅い実績があるギア系モデルをデビューさせたことは間違っていない。

後ろから見てもスクエアなシェイプ。前後の黒いフェンダーの上にボディーが載せてあるような造形

 そういうタイミングで、ライバルのハスラーはモデルチェンジをした結果、少し保守的になった。先代に対して、より先鋭化してタフさを売り出すより、むしろ洗練方向に振った。乗り心地の向上も含め、乗用車方向、つまりマイルドな方向へ少しシフトしたのである。スズキとしてはより普遍的な方向へ立ち位置をずらしたとも言える。当然それはより多くの顧客にアピールするための施策である。

 対してタフトは、特にデザインに関して、ギア感にかなり振り切った。徹底してタフ感を打ち出したデザインは、ラインを水平・垂直に統一して、全体のシェープもディティールも四角く仕上げた。

 もう一点面白いのがルーフの高さだ。これを下げてきた。これによってフロントもサイドもウィンドーが描く矩形(くけい)が横長になり、安定感を増した。カスタムカーの世界では、ピラーを切り縮めてルーフを低くするチョップトップというスタイルがある。このデザイン手法を取り入れたことで四角四面の造形ながら、どこかスポーティ感も併せ持っている。

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