移動時間の無駄を減らす商機は3つある。「移動時間を楽しくする」「移動時間を短くする」、そして究極には「移動しない」だ。
「移動時間を楽しくする」は、鉄道でいえば車内エンターテインメントだ。観光列車が大量に発生した理由でもある。移動を楽しくすれば目的になるし、ビジネスになる。
駅の通路や階段を楽しくすれば歩きスマホが減るかもしれない。北風と太陽のように、電波を遮断する北風案も考えられるけれど、もっと楽しい仕掛けがあれば「スマホを見ない」という太陽案がうまくいく可能性はある。エスカレーターの頭上のスピーカーからニュースやヒットチャートの紹介が聞こえれば、歩かずに足を止めて聴くかもしれない。
「移動時間を短くする」は、今まで多くの交通機関が努力してきた部分だ。鉄道でいえば速達列車の運転である。通勤電車の急行運転だ。東海道新幹線では時速285キロを達成し、短縮時間は3分だった。そこに価値はある。「のぞみ12本ダイヤ」は待ち時間を減らす効果がある。人々が移動を退屈だと思う限り、高速化への挑戦は終わらない。
そして最近、抜本的な対策案が浮上した。「移動しない」だ。無駄だから移動なんてやめてしまえ。リモートワークで十分ではないか。これは強烈だ。今まで鉄道事業者が実施してきた「移動時間短縮」の努力はなんだったのか。
これまで「通勤定期」として企業が出してくれた売り上げが「リモートワーク関連IT機器費用」「住宅手当増額」に振り向けられてしまう。鉄道事業の売り上げがIT業界や不動産業界に狙われている。前回の記事(リモートワーク普及で迫りくる「通勤定期券」が終わる日)でも触れたように、鉄道業界はこの大変革に対応すべく模索している。
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