吉祥寺でステーキ戦争勃発 「いきなり!」「やっぱり」「ステーキ屋松」の決定的な違いをプロが分析飲食店を科学する(7/7 ページ)

» 2020年08月17日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]
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松屋の運営会社が高原価率のステーキ業態を展開する理由

 ステーキ屋松単体での原価率は公表されていませんが、松屋フーズホールディングスの決算資料を確認すると、松屋全体の原価率は33%です(20年3月期)。仮に牛めし並盛の原価率が33%だとした場合、1杯320円の牛めし並盛を販売すると、214円の粗利となります。

 仮にステーキ屋松の原価率が60%だった場合、1050円のステーキ粗利を計算してみると、1050円×40%=420円となります。

 つまり、たとえ原価率が60%でも、牛めし1杯を売るより2倍近い粗利が確保できます。逆に考えれば、客数が松屋と比べて半分でも粗利額が変わらないということです。

 圧倒的な店前通行量を必要とする牛丼業態の出店可能立地が飽和していることや、人口減少というトレンドの中で、「客数が少ない」=「2等立地でも成り立つ」、そして賃料も抑えられるビジネスモデルにチャレンジすることは重要な意味があります。

 同じようなステーキ業態に見えても、数値分析や現場調査をしてみると、各社の戦略の違いがくっきりと見えてきました。こうした戦略を踏まえた上で、これからも3ブランドの動向に注目していきたいと思います。

 少しでも皆さまのご参考になれば幸いです。最後までお読み頂きありがとうございました。

いきなり!ステーキのメニュー
ステーキ屋松のメニュー

著者プロフィール

三ツ井創太郎

株式会社スリーウェルマネジメント代表。数多くのテレビでのコメンテーターや新聞、雑誌等への執筆も手掛ける飲食店専門のコンサルタント。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて料理長や店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う傍ら、日本フードビジネス経営協会の理事長として店長、幹部育成なども行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。


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