そろそろ「旅行だから、学校休みます」を認めませんか? 戦後最悪GDPから脱するためにスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2020年08月18日 08時12分 公開
[窪田順生ITmedia]

昭和スタイルの一極集中型観光ビジネス

 では、この「足かせ」を外せば、日本はどうなるか。

 まず、消費が活性する。1100万世帯が自分たちのタイミングで、自分たちの好きな場所へ行けるので、これまで時間的、経済的な理由でレジャーや観光を控えていた人たちの背中が押される。これまでお盆休みのバカ高い宿泊費から家族旅行を敬遠していた人たちも、自分たちの予算に応じた旅行ができるようになるのだ。

同じ休日に、同じ観光地に訪れる「一極集中型観光」(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 また、観光地の「密」が解消される。このお盆休みに伊豆に行ってみたところ、熱海のサンビーチは普通に「密」で、東京、神奈川だけではなく埼玉ナンバーのクルマに乗って多くの子どもたちが押しかけていた。首都圏の公立学校の夏休みは短縮しているので、多くのファミリーにとって家族旅行はこのタイミングしかない。学校の休日がギュッと凝縮されて密になったことによって、観光地まで密になってしまい、感染リスクが高まるという皮肉な現象が起きているのだ。

 各家庭が自分たちのタイミングで「夏休み」を取る自由を得れば、このような一極集中を起こりようがない。つまり、「遊びや旅行を理由に学校を休む自由」を認める施策は、Go To トラベルキャンペーンなどよりはるかに安全に、そしてはるかに効果的に、個人消費を盛り上げることができるのだ。

 さらに、長い目で見れば、この施策は観光業者側にもメリットがある。実は今、日本の観光地では「観光客をいかに分散させるか」が喫緊の課題になっている。国内の団体観光や家族旅行だけに依存していた昭和の観光業では、繁忙期に観光客を短期間に一極集中させられるかが勝負だった。密をつくって効率的にさばく「海の家」のような稼ぎ方だったのだ。

 しかし、人口減少でそのようなビジネスモデルは崩壊しつつある。団体ツアーや修学旅行にドップリ依存していた昭和の観光地は閑古鳥が鳴いて、外国人観光客からもそっぽを向かれているのだ。なぜこうなってしまうのかというと、気候や季節に左右される海の家ではいつまでたっても収入が安定しない。

 経営も安定しないので設備投資が難しいし、優秀な人材を雇うこともできない。ということは、観光地としての魅力やサービスを向上させることが難しい。SNSやネットで口コミが一瞬で広まるこの時代に、そういう殿様商売が通用しないのは説明の必要もないだろう。

 そこで、日本の観光地でこのような海の家型ビジネスモデルからの脱却が進められている。ゴールデンウイークや夏休みに集中して1年分の稼ぎを得るようなスタイルではなく、年間を通じて国内外から観光客が訪れるような魅力のある観光地を目指しているのだ。

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