そろそろ「旅行だから、学校休みます」を認めませんか? 戦後最悪GDPから脱するためにスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2020年08月18日 08時12分 公開
[窪田順生ITmedia]

従来のやり方が通用しなくなっている

 国内のファミリーが学校の休みに縛られることなく、通年で訪れるようになれば、観光客の分散が進む。地方の観光業も経営が安定して、地域の雇用や経済に貢献する優良企業へ成長していく。と言ったところで、教育関係者から猛烈な大反対がくることは間違いない。おそらくこんな感じのお叱りが飛んでくるのではないか。

「コロナの休校でただでさえ学習格差が出ているのに、学校を休ませられるわけがないだろ!」

「そんな理由で学校を休ませたら、ズル休みがクセになってロクな大人にならない!」

「休んだ後に勉強が遅れたら誰が面倒を見るのだ! 過重労働で死にそうになっている教師に余計な仕事を増やすな」

 もちろん、ご指摘はごもっともだ。ただ一方で、コロナ禍によって子どもたちも修学旅行などの行事がなくなったり、部活の大会がなくなったりということで、日常から「娯楽」がなくなっている部分があるのも事実だ。そこに加えて、夏休みも短いのでどこにも遊びに行っていない家庭も少なくない。窓を開けた蒸し暑い教室で、汗だくになりながらマスクをつけて授業を受けさせるだけでは、子どもたちの心は疲弊する一方ではないだろうか。

 「教育格差」も確かに深刻ではあるが、「旅行目的で学校を休む自由」を認めたくらいでは影響は限定的だ。文科省の調査でも公立中学に通う子どもの7割は塾に通っていることが分かっている。つまり、コロナ以前から勉強のできる子と、できない子の「格差」は存在しており、それがコロナでより明確になっているに過ぎないのだ。

 また、親も学校も一丸となって子どもの登校を優先してきた割には、不登校が年々増加していることも忘れてはいけない。文科省の定義によると、中学生の不登校は全国で11万人だが、『子どもの“声なき声” 第2回「“不登校”44万人の衝撃」』(NHKスペシャル)によれば、「登校しても教室に入れない」「教室で苦痛に耐えているだけ」という、“隠れ不登校”ともいえる中学生が推計で約33万人もいることが明らかになったという。

 やはりこれも「従来のやり方が通用しなくなっている」ことの証なのではないか。

 日本の学校、特に公立学校は子どもに「個」を殺して、全体にフィットさせることを叩きこむことに重きを置く。だから、同じ制服を着て、同じルールに従わせる。体育では外国人が驚くような軍隊教育を施し、「前ならえ!」と整列をさせ、北朝鮮のマスゲームのような一糸乱れぬ同じ動きや人間ピラミッドもさせる。勉強ではとにかく同じ学習レベルを目指して勉強をさせる。このような「同じ」をやたらと求める教育に、子どもたちが悲鳴を上ている。その結果が、「44万人の不登校」なのではないか。

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