ただ、プロ野球以外の競技、さらに下部リーグとなれば、そうはいきません。資金繰りで頭がいっぱいのチームも多いはずです。今年からB3さいたまブロンコスの経営も見ている私にとって、これはひと事ではなく、まさに実感しているところ。悠長に、きれいごとや根性論を論じている余裕はありません。
コロナ禍の収束が見通せず、経済のV字回復が見込めない中では、正直スポーツはあくまで不要不急のものです。こうした時代には一般化しているものは強く、一部のコアなファンで成り立っているものは厳しい状況を強いられます。それが、冒頭で触れたJリーグが盛り上がり切れていない数字上の分析結果にも表れているように思います。
今、私がプロスポーツの運営において注目しているのが、コロナ禍以前と比べて、どれだけの人がスタジアム・アリーナに戻ってきているのかを表す数字、いわばコロナの時代における観客の「コロナ回帰率」です。民間調査会社・日本リサーチセンターが6月に発表した調査では、「不安が完全になくならなくても観戦したい」と回答したのは、過去に観戦経験がある人に限定しても30%台(プロ野球35.3%、Jリーグ32.3%)、観戦経験のない人に至っては10%台前半(プロ野球10.7%、Jリーグ13.6%)という結果が出ています。スポーツは不要不急のもの。そんな社会の一般的な認識が、この数字からも見えてきます。
プロ野球は、そもそも平常時に1試合当たり3〜4万人×主催72試合を常時動員できる体力があります。つまり、年間延べ200万人以上の母数があるわけです。さらに、プロ野球は一人当たりの「回転率」(1人当たりの年間観戦試合数)がそこまで高くなく、ある関東圏の人気球団は「1.3」ほどといわれています。単純計算として200万人を「1.3」で割ると、少なくとも1球団当たり約154万人の広いマーケット(母数)があるというわけです。
コロナ禍において、5000人のキャパシティーで有観客開催を60試合主催しなくてはならないとすると、延べ最大で30万人の動員で今年は全試合満員にできることになります。途中から制限が緩くなっても、多くて60万人ほどでしょう。つまり、コロナ禍以後の「回転率」に当たる「コロナ回帰率」が、わずか「0.19〜0.39」で完売状態が続くことになります。
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