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» 2020年09月03日 05時00分 公開

働き方の「今」を知る:最近よく聞く「ジョブ型雇用」の掛け声がどこか空疎に思える、これだけの理由 (1/5)

注目が集まるジョブ型雇用。やや言葉だけが独り歩きしている感もあるが、大手でも導入が進み「ジョブディスクリプション」の整備も進む。しかし、筆者の新田氏はジョブディスクリプションの整備だけでジョブ型の定着には不十分だと指摘する。

[新田龍,ITmedia]

 昨今、わが国の大企業で「ジョブ型雇用」を導入したり、既に制度があった企業では対象者を拡大したりする動きが広がりつつある。

 富士通では本年4月より、管理職1万5000人を対象にジョブ型の人事制度を導入しており、今後は一般社員へも拡大していく予定だという。日立製作所では既に海外拠点などの一部でジョブ型を導入済だが、今後は国内一般社員約3万人への制度対象拡大に向けて職務記述書(ジョブディスクリプション、JD)作成に着手し、2024年までに制度定着を目指すという。またKDDIは、新卒採用で実施済のジョブ型採用枠を約4割に拡大し、21年度からは管理職にもジョブ型を導入予定。NECでも21年新卒入社者からポジションに応じた報酬で処遇する予定であり、資生堂も21年1月から一般社員3800人をジョブ型制度に移行するとしている。

NECは21年4月入社の新卒採用から新たな仕組みを導入する(出所:同社採用ページ)

 各社とも「労働時間ではなく、成果に応じた報酬体系を採り入れ、生産性向上や社員の自律的な成長を促す」「年齢や社歴などに関わらず、職務に最適な人を配置でき、適材適所が進む」など一様に前向きで明るい将来像を描いているようだが、果たしてこの「ジョブ型雇用制度」とはどのようなものなのか。そして今なぜ大企業が相次いで導入を急いでおり、果たしてこの施策がアフターコロナの不透明な時代を切り開ける切り札となり得るのかどうか、検証していこう。

世界標準の「ジョブ型雇用」と、日本の「メンバーシップ型雇用」

 そもそものところで労働市場の構造や雇用慣行が、日本と諸外国では大きく異なっている。われわれが当たり前のように受け入れてきた「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列」といったシステムは、実は世界的にみてかなり特殊なものだ。

 日本では会社組織ごとに「求める人物像」が決まっており、「意欲」「主体性」「粘り強さ」といった資質を持った人がその会社に応募して採用される傾向にある。仕事は入社後、それぞれの人に合わせてあてがわれる形をとるので「人に仕事がつく」形態であり、報酬は業務処理力(通常は年齢=年功)に応じて決まるため「職能給」とも呼ばれる。

 日本企業では建前として「全員が経営幹部になれる可能性がある」という平等性を“売り”にしており、それゆえに「全員が出世を目指して頑張る」という姿勢が大前提となる。入社したらその組織の「ファミリーの一員」かのごとく扱われ、多少仕事ができなくても、また急な景気変動が起きて会社の業績が悪化しても、いきなりクビとなることは基本的にない。賃金据え置き、異動や転勤、転籍、出向などの形で雇用が保証される代わりに、労働者は企業内の全ての業務に従事する「義務」が発生する。このように「ファミリーの一員として組織の要望に無制限に応える」働き方から、職能給による雇用制度は別名「メンバーシップ型」と呼ばれる。

 一方で日本以外のほぼ全ての国では、「仕事」に対して求められるスキルや資格、経験、そして支払われる賃金までもがJDで規定されており、資質をもった人がその「仕事」に応募して働くという形をとる。いわば「仕事に人を当てはめる」形態であり、報酬も仕事に応じて決まるので「職務給」「ジョブ型」雇用制度と呼ばれる。

 これら「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の大きな違いは、「昇進」と「解雇」にあらわれる。

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