仕事範囲を限定せず、ゼネラリスト的な育成方針をとっていた日本企業にとって、「個別ポジションの担当業務内容や業務範囲、求められるスキル、難易度などを詳細に記述したJDを基に採用し、配置する」という概念はあまりなじみのないものであった。
ちなみに、わが国では入社時に「労働条件通知書」を交付するものと労働基準法で決められている。雇用契約自体は口頭でも成立するが、使用者側は立場の弱い労働者を保護するため、主要な労働条件を書面で明示しなければならないのだ。その中でも、絶対に記載しなければならない事項は以下の通りと定められている。
これだけを見れば、わが国の書式でもJDとして十分詳細に記述できているように思えるかもしれない。しかし、この項目の中で諸外国のJDとは大きく異なる箇所がある。それは「業務内容」に関する部分だ。日本式の労働条件通知書では大抵の場合、業務内容は「営業に関する業務」「▲▲の製造」といった、かなり漠然とした書き方が主である。実際、入社後に部署異動する可能性もあるため、あまり厳密にならないようにしている面もあるだろう。
一方、諸外国では当該ポジションの業務遂行に必要な諸条件を満たすプロフェッショナル人材を求めるため、必然的に業務内容の説明が詳細となる。具体的にはこのような条項まで網羅されていることが一般的だ。
など
ここまで詳細な情報が必要な理由は、JDこそがその人にとっての評価基準であり、労使間のコミュニケーションの土台となるからである。労働者は「JDに書いてあることをやれば評価される」という前提で働くので、実際の業務がJDの内容と乖離(かいり)していたり、JDに記載のない事項で合否判断したり(「求められる経験やスキルでは合致しているのに、身体的に障害があるから選考対象から外した」など)、評価したり(「上司から誘われたホームパーティに参加しなかったからマイナス評価」など)してしまうと、従業員側から訴えられるリスクもあるのだ。
すなわち、JDが確実に規定され、運用されることによって、次のようなメリットが生まれる。
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