こういう不満をさらに膨らませる恐れがあるのが、日本中で問題になっている移住者と住民の対立、いわゆる「移住トラブル」だ。筆者も沖縄のある離島の移住トラブルを現地で取材したことがあるが、家の建て方、ライフスタイル、地域の開発についてなどさまざまな面で、感情のすれ違いから訴訟に発展するようなケースもあった。
現在、パソナと淡路島の住民との関係は良好だろうが、これから観光開発を加速していくとすれば、ハワイや沖縄、そして京都などでも必ず起きた「観光公害」の問題が顕在化する。それがこじれれば、「パソナ社員VS. 住民」という対立にも発展しかねない。1200人は住民にとっては「移住者」であると同時に、観光開発業者でもあるからだ。
つまり、企業の戦略として1200人の社員を淡路島に「定住」させることは、引越しをさせて「はい、終わり」ではなく、そこからスタートをする1200人分の「移住リスク」にも企業として向き合っていかなければいけないことなのだ。
ここまで述べた2つのリスクは、企業としてしっかりとした対策を取れば十分に回避できるものである。だが、対策をとっていたとしてもかなりのダメージを覚悟しなければいけないのが、(3)の「南海トラフ地震による機能麻痺」だ。
ご存じのように、南海トラフ地震は、19年に政府の地震調査委員会が今後30年以内に発生する確率を「70%から80%」に引き上げたことで大きな話題となった。では、淡路島はどのような被害になるのか。兵庫県の「兵庫県南海トラフ巨大地震・津波被害想定」には以下のようにある。
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