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パソナの1200人淡路島移転は「リスキー」だと感じる、3つの理由スピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2020年09月03日 08時17分 公開
[窪田順生ITmedia]
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本社機能移転は「遷都」と同じ香り

 日本ではもう半世紀以上、「遷都」の議論が続けられてきた。50年以上前は、東京はもはや限界なので富士山の麓(ふもと)に政府を移すなんてことが国会でも真面目に論じられた。しかし、その話は一向に進まない。少し前には消費者庁を徳島に移すなんて話もあったが、全面移転は見送りとなり一部だけとなった。

 なぜ「遷都」がうまくいかないのかというと、政府のリーダーが決めたことを実行に移す官僚も本音を言えば、「東京から離れたくない」からだ。人間というものは、権力によって自分の人生を変えられそうになると全力で抵抗をするものなのだ。

 今回のパソナの本社機能移転は「遷都」と同じにおいが漂う。南部代表という政界にも影響力のあるカリスマ経営者の決定とはいえ、抵抗をする社員も出てくるはずだ。最悪、消費者庁のようなことになるかもしれない。

 そういうリスクの高い「遷都」より、やはり「地方分権」のほうが現実的だ。つまり、各地方拠点に権限を与えて、本社の権限集中を緩和するのだ。このように地方に権限を与えたほうが、危機管理的にも正解だということは、自治体のコロナ対策が証明している。

 影響力のある大企業が先陣をきって「本社オフィス廃止」に踏み切れば、この国の働き方はきっと変わる。パソナには、「社会の問題点を解決する」という素晴らしい理念に基づいた「英断」を期待したい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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