鉄道業界で大流行の「SDGs」 背景に見える、エコテロリズムへの危機感杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2020年10月02日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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SDGsが「環境を大切にしている」免罪符に

 グレタさんをテロリストと呼ぶつもりは毛頭ない。彼女の活動は無償の個人的な主張、行動だけれども、欧州を中心に賛同者は増えているようだ。そうなると一定数の過激な人々も現れる。しかし、環境活動家たちの言う通りに二酸化炭素排出量を激減させれば、現在の人々の文化的な生活はほとんど奪われる。まるで「原始に帰れ」となりかねない。こうした過激な思想が蔓延(まんえん)すると、捕鯨活動のように企業の経済活動を阻害されかねない。

 そのとき、SDGsは企業や国家にとって「環境を無視していませんよ」「大切にしていますよ」という免罪符となる。また、エコテロリズムの芽をつむための教育活動ともいえる。私学の入試にSDGsが登場するわけだ。

 ちなみに「新聞・雑誌記事横断検索:ビジネスデータ:@niftyビジネス」で「SDGs」を検索したところ、2011年まではゼロ。12年に106件、13年に10件、14年に35件となった。SDGsの提唱と原案作りは12年から始まっている。

 この数字は共同通信など通信社の配信と、配信を受けた媒体の件数も加算されるため、同じ内容が重複する。だから事象の数ではなく、伝わっていった件数だ。採択された15年は238件と増えて、発効した16年は599件と倍以上の増加。17年は2084件、18年は5132件と倍々ゲームだ。報道媒体の関心の高さがうかがえる。取り組みを始めた企業の報道が増えたためだろう。この時期はエコテロリズムの活発化と呼応しているように見える。

 19年には1万2452件と5桁になり、倍々ゲームで増えている。20年は9月までで1万534件となり、前年1年間の数字に並びそうだ。

 SDGsは、ふんわりとした企業イメージ向上活動ではない。グレタさんのように将来の環境破壊を悲観する若い人へ向けた、大人たちからの回答だ。多くの人々が利用し、人目に触れる公共交通機関がSDGsに加わり、推進する意味は大きい。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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