人口減は予測できたのに、なぜ百貨店は増えていったのかスピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2020年10月20日 09時10分 公開
[窪田順生ITmedia]

ビジネスモデルは昭和から変わらない

 この構造と丸かぶりなのが、賃貸アパート市場だ。少子高齢化が進行すればアパートの部屋が埋まらないことは分かりきっていたのに、日本中の土地持ちのオーナーに「賃貸経営は儲かりますよ、サブリースで家賃保証しますから」と甘い言葉を囁(ささや)いてアパートを建てさせる。そんなイケイケドンドンで拡大路線を突き進んだ結果が、今のレオパレスの苦境なのだ。

 なんてことを言うと、「イケイケドンドンなどではない、われわれもずっと少子高齢化時代に備えてさまざまな取り組みをしてきたのだ」と怒りの反論をされる百貨店業界の方たちも多くいらっしゃるが、外の世界から見ている限りは残念ながらそう思えない。

百貨店の店舗数はそれほど減っていない(写真提供:ゲッティイメージズ)

 全国の百貨店が加盟する日本百貨店協会のデータによれば、今年8月の全国百貨店は203店(73社)である。では、合計特殊出生率が過去最低の1.57になっていることが大きく報じられ、少子高齢化という言葉が広く社会に浸透した「1.57ショック」があった、1990年の百貨店はどうだったかというと、260店(110社)である。

 「この30年で57店も減ったのか……」と思うかもしれないが、そうではない。実はバブルが崩壊して日本が平成不況に突入していくのと対照的に、百貨店はイケイケドンドンの出店ラッシュに入っていくのだ。

 バブル崩壊後の93年には273店(118社)、97年には294店(132社)と右肩あがりで増え続けて、99年には311店(140社)まで膨れ上がる。つまり、これからやってくる少子高齢化時代に日本中が警戒する中で、百貨店業界は「そんな話はわれわれには無縁だ」と言わんばかりに、10年弱で50もの店舗を新規オープンさせていたのだ。

 と聞くと、「それだけ出店できたということは、百貨店側も少子高齢化に備えて、いろいろ新しい取り組みをしてそれなりに儲かっていたからでしょ」と思うだろう。もちろん、そのような側面もないわけではないが、90年代の百貨店も現在の百貨店も、基本的な業態は何も変わっていない。ネット通販が始まってオムニチャネルだなんだと細かな違いはあるが、「館」の中にさまざまな店が入っていて、客が訪れてショッピングをするというスタイルは昭和から変わらない。

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