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「週休3日」「副業容認」は各社各様 “柔軟な働き方”を手放しで喜べないワケ見逃してはいけない「3つの変化」とは?(5/5 ページ)

» 2020年10月21日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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 例えば週休3日制を導入する場合、中にはそれを望まない働き手もいるかもしれません。仮に給与を減らしたくない人が、週休3日制を選ばざるを得ない状況に追い込まれて、嫌々ながら承諾するというようなことがあった場合、それは働き手にとっては不合理な施策です。さらに、将来に対しての不安が募ることになります。

 企業が経済的合理性に照らし合わせて施策を打つことは当然かもしれませんが、結果的に働き手の自由を無用に奪ったりモチベーションを下げてしまうようになってしまっては、回り回って企業側にもデメリットが生じます。そうなると本当に合理的といえるかどうかも疑わしくなります。

経済的合理性だけではない道を探るべし

 さらに、企業が働き手に柔軟な選択肢を提供する背景には、人口減少・厳しい市場環境・コロナ禍と少なくとも3つの事情が重なっています。今はコロナ禍への対応に目が奪われがちですが、他2つの変化も厳然として存在しています。これらは入れ替わりで生じたのではなく、今も3つ同時に重なっているのです。目先の経済的合理性だけで判断してしまうと、働き手との信頼関係が損なわれ、後々大きなしっぺ返しがやってくる懸念もあります。

経済的合理性だけでなく、働き手も納得できる制度を(出所:ゲッティイメージズ)

 今は働き方の柔軟度が高まる方向に進んでおり、そのこと自体は望ましいことだと思います。しかし、柔軟度と引き換えに将来が不安になるようでは、企業と働き手の関係性が幸せな方向に進むとは思えません。企業には経済的合理性を踏まえつつも、柔軟性と安心感を両立させる選択肢を働き手に提示する努力が求められます。

 一方で、厳しい市場環境の中、全てを企業努力だけに委ねるのは限界があります。企業が市場競争力を高め、働き手が柔軟性と安心感を両立できる社会システムの構築に向けて、政府のリーダーシップ発揮も求めたいと思います。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業。テンプスタッフ株式会社(当時)、業界専門誌『月刊人材ビジネス』などを経て2010年株式会社ビースタイル入社 。2011年より現職 (2020年からビースタイル ホールディングス) 。複数社に渡って、事業現場から管理部門までを統括。しゅふJOB総研では、のべ3万人以上の“働く主婦層”の声を調査・分析。 『ヒトラボ』『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰。NHK『あさイチ』など、メディア出演・コメント多数。 厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。 男女の双子を含む4児の父。


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