新型コロナウイルスのまん延が、「夢の国」にも深刻な影響を与えていることが報じられました。朝日新聞が9月14日に掲載した記事「オリエンタルランド、ダンサーに配置転換要請へ 退職も」は、イベント中止で仕事がなくなってしまったダンサーなどの出演者約1000人に、飲食店など他の業務への転換を求めると伝えています。記事によるとダンサーなどの出演者は時給制なので、正社員ではなく非正規社員と呼ばれる雇用形態に該当すると思われます。総務省の労働力調査によると、2020年7月の非正規社員の総数は2043万人。前年同月比で131万人減少しています。
一方で、正社員と呼ばれる雇用形態は3578万人で、前年同月比で52万人も増えています。正社員の数が増えている背景としてはさまざまな理由が考えられますが、このデータから見えてくるのは、非正規社員の退職が進んでいる一方で正社員は守られているという図式です。非正規社員は「雇用の調整弁」になっているという指摘をよく耳にしますが、この数値はそれが事実であることを如実に表していると思います。
非正規社員が増加した理由の一つとして、1995年に日本経営者団体連盟が発表した「新時代の『日本的経営』」の中で提唱された雇用ポートフォリオという考え方が挙げられることがあります。
雇用ポートフォリオとは、多様な雇用形態を組み合わせてより効果的な企業経営を目指す考え方です。「新時代の『日本的経営』」では、雇用形態の在り方を「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の3グループに分けて説明しています。「長期蓄積能力活用型」がいわゆる正社員に相当し、それ以外は現在の非正規社員に近い概念と捉えられています。
「新時代の『日本的経営』」が発表された当時から、日本の雇用慣行は長期雇用をベースにして硬直的である一方、企業経営は柔軟性に富んでいるというギャップが指摘されていました。そのギャップを埋める施策として、雇用ポートフォリオの考え方が生まれたと考えられます。
3つ目のグループである「雇用柔軟型」は、経営環境に応じて調整可能な柔軟性を備えた契約形態となるため、不景気などの際には「長期蓄積能力活用型」の社員や企業自体を守る役割を果たすことになります。一方で、その役割が「柔軟性」の名の下に犠牲を強いていると捉えることもできるため、今でいう非正規社員には、自らの雇用と引き換えに調整弁としての役割を果たす、かわいそうな存在としてのイメージが一般化している感があります。
では、そもそも非正規社員と呼ばれる人たちは、なぜそのような働き方を選んでいるのでしょうか。
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