かねての労使対立のような構図はかなり時代に合わなくなってきた感がありますが、今も働き手の立場が企業の使用者よりも弱いことには変わりありません。雇用労働システムを変えるには、働き手と企業との力関係の格差を縮めることが必要です。力関係が近くなれば、個々の働き手は企業に意見を伝え交渉しやすくなります。
その力関係の均衡をとるためにサポートしてくれているのが、労働組合やユニオンの存在です。しかし、前提となっているのは企業の方が立場が強いという構図です。雇用労働システムを根底から変えるためには、力関係の構図そのものを変えなくてはなりません。
働き手と企業との力関係の格差を縮める上で鍵となるのが、選択肢の増加です。仮に働き手が今の勤め先を退職したとしても、次の勤め先や収入確保の仕組みが多数用意されていれば、安心して退職を選択することができます。あえて不本意な条件で勤める必要はありません。
あるいは、働き手が複数の仕事を掛け持ちすることが標準形となる社会にするという方法もあります。仮に5つの仕事を均等な分量で掛け持ちできた場合、1つの仕事を辞めたとしても、痛みは5分の1で済みます。収入は5分の4に減少しますが、ゼロになるわけではありません。残った4つの仕事をこなしながら、新たに5分の1程度の仕事を見つけることができれば、収入は元の水準に戻ります。
もちろん、そのような雇用労働システムを実現するためにはたくさんのハードルがあります。また、仮に実現できたとしても新たな問題が持ち上がることも考えられます。しかし、雇用労働システムを進化させていく上で目指すべきイメージの一つではあると思います。
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