最初に生じた変化は、人口の減少です。総務省統計局が発表している総人口の推移を見ると、日本の人口は2010年頃から下降線をたどり続けています。
15歳から64歳までの生産年齢人口に至っては、さらにさかのぼって1997年頃から減少を続けています。人口が減るということは当然、労働力を確保したいと思っても母数が少なくなるということです。そうなると、少ない人材を各社が取りあうことになり、競争が激しくなります。
人口が減少に転じた2010年頃は、まだリーマンショックの影響で採用需要が抑えられていましたが、経済の回復に応じて需要が高まるとともに人手不足感が強まるようになりました。その結果、これまで十分に戦力化できていなかった主婦層やシニア層などの労働参加が促され、企業は柔軟な働き方が選択できるよう施策を打つようになりました。
もう一つの変化は、グローバル競争の激化やテクノロジーの著しい進化がもたらす厳しい市場環境です。企業は今まで以上に先が読みづらい市場の中で戦わなければならなくなりました。また、人工知能(AI)やデジタルトランスフォーメーション(DX)といったキーワードが一般用語化する中で、ITテクノロジーに長けた人材をグローバル市場の中で奪い合わなければならない状況も生じています。
いままでの日本国内の“常識”に縛られていては太刀打ちできない環境が広がる中、思い出されるのが、経団連の中西宏明会長が発した「終身雇用はもう守れない」という言葉です。社会に出て就職したら、その1社で一生働き続けるという仕組みは制度疲労を起こしており、社会システム自体を変えて行かなければならないという考え方が示されました。
終身雇用が守られないということは、企業と社員との関係性が柔軟になっていくということに他なりません。もう少しかみ砕くと、「1社で拘束する代わりに企業が社員の生活を守る責任を負う」という関係性から、「拘束力を弱める代わりに企業が社員の生活を守る責任も軽くする」という関係性へ変わっていくということです。
中西経団連会長が終身雇用の限界に言及する前から、厚生労働省では副業・兼業を促進するガイドラインをまとめていました。行政施策としても、企業が競争に打ち勝つために、柔軟な働き方が選択できるようにしていくことは必然の流れだったと言えます。
そして、忘れてはならない上に、われわれの社会にクリティカルな影響を及ぼしているのが、3つ目の変化です。
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