新規事業部門に適した業績評価制度をつくるには、「フェーズによって臨機応変に評価指標を変えることが重要」(北瀬氏)だという。
「アイデアのフェーズでは数値目標を掲げても意味がないため、プロセス評価を徹底します。市場をつくるためにどのように貢献するのか、リアルな事業に近づけるためにどのような行動をするのか、という指標です。その後、本格投資のフェーズで事業価値を測る。ここから指標が変わります。例えば1年後、事業価値を高めるために具体的に何をするのか、事業価値の結果はどうなったのかを評価します。単に定量評価に一喜一憂するのではなく、いずれも上司と部下で対話をし、部下が事業開発を進めるにあたって適切な行動を取っているかも評価することが目的です」(北瀬氏)
その他、ミネルバ大学の仕組みを取り入れた全面オンラインのトレーニングプログラムを実施したり、社外の専門家に評価をしてもらったうえで“飛び級 ”で昇格できる制度をつくるなどして、事業開発に生き生きと意欲的に向き合う環境を整えている。
しかし、そこまで大きなリスクを取りたくない、という社員もいる。そのため、NECに籍を置きながら、NECがLP出資(*)したファンドが会社をつくり、社員を出向させるという仕組みも構築した。2年後、マイルストーンを達成したらNECはその会社を買い戻し、達成できなかったら買い戻すことはしないが、出向者は戻ることができる。社員はセーフティネットを持ちながら、NECという看板を掲げずにスタートアップの一員として真剣勝負ができるのだ。
(*)LPはリミテッドパートナーの略。投資事業有限責任組合(LPS)は、ベンチャーキャピタルなどが組成する投資事業組合で、LPは資金出資者であり、その責任が出資した金額のみに制限される有限責任組合員。
「新規事業の創出は、経営の新陳代謝にとっても、人の成長にとっても非常に重要な活動です。小さな魚を外に出して、成長させて元に戻す、という螺旋(らせん)階段を登るようなサイクルをつくることで、人も事業も成長させるのがグループの価値の最大化につながると信じています」(北瀬氏)
本記事は『Works』162号(2020年10月発行)「グループ全体を成長に導く人事の3社の実例」より「Case3 新規事業が生まれ、育つカルチャーをつくる/NEC」を一部編集の上、転載したものです。
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