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新規事業が生まれ、育つカルチャーをつくる NECの挑戦リテンションにつながるプロセス評価(2/3 ページ)

» 2020年10月23日 07時00分 公開
[リクルートワークス研究所]

 「当たり前のことですが、経営陣にしてみれば、優れた技術や優秀な人材を外に出したくありません。グループ全体のことを考えれば経営をコントロールしたいのも理解できます。ただし、優れた技術と人がなければ投資家は集まらない、また経営をコントロールされるとスピード感を欠くというように、新規事業を成長に導くには足かせになるものばかりでした。ですから議論が出るたびに、『新規事業の目的は何か。NECグループの価値を最大化することではないのか』という大原則にのっとって、NECにとって価値があると言い続け、理解を得たのです」(北瀬氏)

 ドットデータの場合、NECと資本提携し、NECは日本での独占販売権を有している。ドットデータは非常に優れた技術とプロダクトを持ち、NECはそれを使って売り上げ・利益を得るという、双方にとってメリットのあるモデルとなっている。

 同社の新規事業開発のスピードを高めていく工夫は、ほかにもある。BIUは2017年度から事業開発を担うビジネスデザイン職種という新職種を創設したのだ。「事業開発と人材開発は両輪で動くべき」というのが北瀬氏の基本的な思想である。

新規事業開発を行う人を正当に評価する

 「ビジネスデザイン職種は、事業の環境変化を捉えて、経営の新陳代謝に貢献することを目標としています。現在、この職種に就くのは、BIU内、各事業部合わせて600名ほど。事業をつくるには、そのドメインの専門家と、ビジネスを立ち上げるプロセスの専門家が必要で、その両方を育てています」(北瀬氏)

 北瀬氏がビジネスデザイン職種の創設にあたって大きく変えたのは評価制度である。「新規事業開発は、既存事業と異なり、売り上げや利益といった分かりやすい数値目標で評価することができません。そのため、市場価値の高い人材であっても、高評価につながりにくいのが現状です。評価されなければモチベーションは維持できませんし、リテンションもできません。彼らを正当に評価するための制度をつくりました」(北瀬氏)

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