その理由をひも解く上では、ホリプロのMBOによる非上場化の事例が手がかりとなるだろう。
かつて、ホリプロがMBOを決定したとき、同じ時期に暴力団排除条例が施行されたこともあり反社会的勢力に対する規制が強化されていた。時期が重なったことで、「芸能プロダクションには黒い交際があるため上場を維持することが難しいのではないか」といったうがった憶測も流れたというが、同社は09年にもMBOを検討していることや、海外の芸能事務所においても非上場企業が圧倒的多数を占めることから考えれば、本質的な別の理由があるはずだ。
実は、ホリプロ側は11年12月に公表したプレスリリースにて、芸能プロダクションとして上場の必要性に乏しい旨に言及した箇所がある。
同社は、「市場を通じた資金調達の必要性が当社にはなく、すでに幅広い知名度、ブランド、信用力等を有している当社にとって、上場を維持するメリットは必ずしも大きくない状況にある」とし、J-SOX法による金商法上の内部統制機能の導入、およびIFRS(国際財務報告基準)や有価証券報告書などの開示にかかる費用が経営負担となることを明らかにしていたのだ。
MBO実施の発表において、「上場を維持するメリットは必ずしも大きくない」とホリプロは記した(ホリプロPDF)
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