だから、多くのアパレルは苦戦することにスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2020年11月03日 08時56分 公開
[窪田順生ITmedia]

「強み」と「弱み」は表裏一体

 それが大袈裟ではないことを示す数字が、日本のEC化率だ。経産省によれば、2019年度のEC化率は6.76%だが、中国のEC化率はなんと6倍の36.6%、米国では11%。距離的にもビジネス的にも結びつきの強いこの2国と比べると、日本のEC化は非常に遅れている「後進国」という印象を受ける。

 ただ、少し見方を変えると、これは「EC化しなくてもそれほど困らない」ことが大きいのだ。ネットでポチポチやらなくても少し外出をすれば、さまざまなブランドの店舗にたどり着く。スマホの画面では、試着した感じや質感は分からないので、「やっぱり店がいいよね」となる。店側も消費者側も最新デジタルの恩恵を感じられないのである。

 つまり、日本はリアル店舗のインフラ化が他国と比べて異常なほど高度に進化していて、その「強み」のせいでEC化の足を引っ張っているのだ。サラリーマンの社畜化が他国と比べて進んでいることで、リモート化がなかなか進まないのと構図的には全く同じである。

 ただ、「強み」というのは「弱み」と表裏一体である。この半年ほどで痛感していると思うが、リアル店舗は、感染症に弱い。陽性の人間が急増すれば消費マインドも冷え込んで、営業自粛や客足激減で、一等地であればあるほど高い家賃や人件費が重い負担になる。そうなると当然、閉店や休業という経営判断に至って「リアル店舗」は急速に縮小していくのだ。

 例えば、カジュアル衣料大手「H&M」は世界に展開する5000店舗の5%に当たる250店舗を来年閉鎖すると発表した。また、ギャップは北米で運営する「GAP」と「Banana Republic」のうち約350店舗を23年度末(24年1月期)までに閉鎖するという。

 日本は人口比で見れば、米国の2倍以上のアパレルが溢れかえっている。高いところから転落したほうがよりダメージが大きいように、リアル店舗依存の強い日本もコロナのダメージはかなり深刻なはずだが、まだ米国や海外のような大量閉店にはいたっていない。

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