だから、多くのアパレルは苦戦することにスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2020年11月03日 08時56分 公開
[窪田順生ITmedia]

ペットショップの実態

 動物愛護団体は保護犬として引き取って、飼い主を探す取り組みもしているが、ボランティアなので限界がある。そこで多いのが、ペットショップなどから引取料をもらって育てる「引き取り屋」と呼ばれる業者だが、免許があるとかでもないので、どのような実態なのかもよく分からないのだ。

 「育てる」と言っても、犬や猫にとってそれが幸せな育てられ方かというと必ずしもそうとは限らない。過去には、暗い室内で狭いゲージの中に何頭も押し込まれ、共食いをしたような形跡もあるような劣悪な飼育環境で引き取りをしていた悪質な業者も見つかっている。

 また、「不審死」も多い。「朝日新聞」の調べによれば、18年度に国内で繁殖・販売されていた犬猫のうち約2万6000匹が、繁殖業者やペットショップのもとにいるうちに死んでいたという。これは流通量の約3%にあたり、5年間で推計すると計12万匹以上にのぼる。

 われわれは日本全国のどこのペットショップに行っても、かわいらしい子犬や子猫を間近に見ることができて、触れ合って、そして購入もできるという、この消費者に優しい社会は、売れ残った何十万匹もの子犬や子猫の屍(しかばね)の山の上に成り立っているものなのだ。

 生きてはいないが、アパレルの構造も実はそれほど変わらない。われわれは最寄りの店舗に足を運べば、大量の服が溢れかえっている中で、気に入ったものを手に取って試着もできる。この消費者に優しい社会は、原価を低くして大量に生産されて大量に「在庫処分」して利益を生み出すというビジネスモデルの上に成り立っているのだ。

 ただ、世界的にはこのやり方はサステナブル(持続可能性)ではないとされている。そこでナイキなど海外の大手メーカーは続々と、D2C(Direct to Consumer)へかじを切って、「余分な店舗も在庫を持たない」ビジネスモデルへの転換を目指している。

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