自前主義から脱却し、比較優位のもと異業態との協業を進めなければいけないのは、実は地銀側だけでもない。証券側も、急いで地銀と連携を進めなければいけない事情がある。本業である売買手数料のゼロ化圧力だ。
米国ではチャールズ・シュワブが19年秋に手数料を撤廃。手数料ゼロをウリとした米ロビンフットは、コロナ禍で在宅勤務中の利用者のニーズをつかみ急拡大。「ロビンフッター」といわれるような社会現象を巻き起こした。国内でもSBIホールディングスが19年秋に手数料無料化構想を披露して以来、ネット証券各社は再び手数料値下げ競争を始めている。
主力の売買手数料がゼロに近づく中で、もう一つの収益源である投資信託などの運用手数料もゼロ化に向けたトレンドにある。米国では信託報酬ゼロの投資信託やETFが登場しており、国内でも成功報酬型を取り入れるなど手数料を下げる動きが始まっている。
証券業界で最後に残る収益源は、顧客へのアドバイス料だと大原氏は見る。「最後のフロンティアは、リテール資産運用では資産運用アドバイス。アドバイスで稼がなければいけないが、地方部では証券会社はお客と密な関係を築けていない。では、誰が顧客を持っているのかというと地銀。地銀が得意とするお客さまとの信頼関係が一番生きるところだ」(大原氏)
こんな背景の中、大手証券会社は地銀との提携を急ぐ。自社は裏側のプラットフォームを提供し、地銀は販売と運用アドバイスといった顧客対応を行う。そこで得られる1%程度のアドバイス収益を、両者で分け合うという形だ。地銀に再編プレッシャーがある一方で、証券業界にもこうしたプレッシャーがある。その結果、証券各社による地銀との提携は、陣取り合戦の様相を帯びてきている。
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