現時点でDeFiの可能性に目を向けている金融関係者はまだ少ない。「これは金融じゃないと考えている人がほとんどだ」と藤井氏は話す。監督省庁の元でビジネスをしているわけでもなく、KYCも行っていない。DeFiにかかわる暗号資産は国内での取り扱いがなく、ましてや暗号資産はほぼ決済にも利用できない。
しかし、藤井氏はDeFiの進歩をインターネットの歴史のようなものだと指摘する。90年代にインターネットが出てきたときは、これほどビジネスに必須のものになるとは誰も思っていなかった。クラウドもそうだ。
まさに規制が働かず、取り締まれないことがDeFiの進化を後押ししている。「いったん始まったら、スピードが早くてコストが安くて、新陳代謝が早い。ネットの発展と似ているし、同じようになる」(藤井氏)
現在でこそ、DeFiが対象にしているのは暗号資産だけだが、時を同じくして急速な発展を始めているステーブルコインが普及すると、実際の金融の代替になる可能性が高い。ステーブルコインはドルや円などと一対一で価値が固定される仮想通貨で、実質的に法定通貨を取り扱うのと同じだからだ。
「規制と歩調を合わせなければいけないので、10年くらいかけて徐々に移行が進み、10年後にはDeFiが一定の認知を得ていくようになるのではないか」と藤井氏は予測する。
金融機関を必要とせず、為替や預金、貸出が可能になったとき、銀行などの役割はどうなるのか。保木氏や増田氏は、既存の金融機関はビジネスモデルを大きく変える必要があると指摘する。想定するのは、消費者のサポート業務だ。
「現在のDeFiはユーザビリティに難がある。特殊なウォレット、ハッキングのリスク、リテラシーが求められる。税務会計もそうだ。必要な要素がたくさんあって、そこにビジネスチャンスがある」(増田氏)
「消費者がブロックチェーン上のトークンをやり取りするのは現実的ではない。顧客に代わって取り引きを実行してくれるような、顧客のために行動する業者が必要になる。ビジネス機会としては、そこを目指すのが金融機関のあり方だ。1〜2年ではないが、長期的には大きくビジネスモデルを変えざるを得ない。金融機関はトークンエコノミーに関する情報収集に取り組んだほうがいい」(保木氏)
規制に縛られ動きの遅い既存の金融機関とは違い、DeFiの進化のスピードは10倍以上だ。国境に関係なく、インターネットにつながっていれば利用できるだけに、日本だけが鎖国することもできない。実際中国ではビットコイン取引が禁止されているにもかかわらず、使っているユーザーは増え続けている。これが、ほかの金融商品に広がったときのインパクトは大きい。
有効性のある規制の在り方とともに、来るDeFi時代に向けて、金融機関の立ち位置が問われる。
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