中谷: 塚田農場さんのスタッフは客席をよく回っていて、お客さんがキョロキョロしてからたった4秒で対応している。ということは、しっかり見ているんですよね。しかし、見る対象物が違っていたのかもしれません。
スタッフに「このように意識を変えませんか?」と伝えても、行動を変えることって難しいですよね。例えば、「お客さんに気を配ってくださいね」と言っても、聞いている側からすれば、どのように気を配ればいいのかよく分かりません。そうではなくて、「どの状態になれば、何秒後にこれをする」といった形で、数字で語ることが大切だと思っています。
数字で語らなければ、どうなるのか。「キョロキョロしてから、何秒後に声をかけていた」といった数字なんて、誰も計測していないので、なんとなく働いてしまう。「売り上げを伸ばして!」などと命じられると、これまで以上にがんばってしまう。でも、結果が出なければ、モチベーションが下がって、辞める人も出てくる。そうなってはいけないので、数値で根拠を示す。数値化できていないものは管理することが難しいですよね。管理できないものは、コントロールすることも難しい。だから、数字は欠かせないんです。
土肥: 数字がなければ、負のスパイラルに陥ってしまう、というわけですね。
中谷: 現在は、リアルタイムでフィードバックできる方法を模索しています。営業終了前に、当日のオペレーション結果(プロセスを数値化)を配信しているんですよね。
土肥: ふむふむ。ところで、なぜ中谷さんはこの仕事を始めようと思ったのでしょうか?
中谷: もともと人の動きなどを分析することが、仕事になるとは思っていませんでした。ずっと、趣味としてやっていたんですよね。例えば、スターバックスの店の前に立て看板がありますよね。以前は黒い看板に手書きでメニューなどが書かれていました。どの看板が効果的なのか、気になってスタバの前を歩く人をチェックしていました。
多くの人は毎分65メートルで歩いているのですが、看板にイチゴのフラペチーノが書かれていると、スピードが遅くなっていたんですよね。平均して、毎分62メートルに。翌月、違うメニューが販売されると、再び人の歩く速度は毎分65メートルになっていました。そんな話をしていると、ある人から「それ、おもしろそうじゃないですか。ぜひ、ウチの店でも計測してくださいよ」と声をかけられたのが、この仕事を始めることになったきっかけでした。
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