デジタル通貨実現への道 日銀キーマンが語るCBDCの今(3/3 ページ)
CBDCを巡る議論でしばしば出てくるのが、トークン型とアカウント型。この2つは、何がどのように違うのか。副島氏の説明からまとめておきたい。
まず、現金はトークン型だ。紙幣という物体が価値を持っている。バスの乗車チケットも、ユーティリティーを持っているユーティリティートークンだといえる。トークンの場合、モノが先にあって、モノに「これは誰のものか」という情報を付ける。リアルなものであれば、持っている人が所有者になる。
有価証券もトークン型であって持っている人が所有者だ。例えば手形もモノだが裏書きによって所有者の情報を付けることで成り立っている。これをそのままデジタル化するときは、有価証券を誰がどれだけ持っているかで考える。これは、ビットコインがそうだ。自分のラベルが付いているトークンを全部集めて、それを合計して、これが持っているビットコイン全額となる。
一方で、預金というのは口座(アカウント)型だ。誰々の口座、というものがあって、そこにいくら入っているかが記載されていて、増えたり減ったりする。人にひもづく口座が先にあって、そこに残高を記載するのがアカウント型になる。
有価証券、例えば株券はもともと紙だった。つまりトークン型だ。しかし、無券面化してデジタル化したときに、発想をトークン型からアカウント型に変えた。ほふりの口座に、その株式をどれだけ持っているか残高で管理する形だ。この概念の大きなジャンプで、「モノと決済指示が分離してしまった」(副島氏)。モノに付随する情報と、マネーが分離してしまったということだ。
このように、モノに所有者情報を記すのがトークン型、所有者の口座に残高情報を記すのがアカウント型。オフライン利用ができるかどうかなど、機能面での違いがいわれることはあるが、根本的な考え方の違いを押さえておきたい。
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