デジタル通貨実現への道 日銀キーマンが語るCBDCの今(2/3 ページ)

» 2020年11月25日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

スケジュールは走りながら考える

 では日本のCBDCのスケジュールはどうなっているのか。既に発表された通り、2021年の実証実験では、技術的にCBDCが実現可能かを検証する実証実験を行う。

 「コンセプト実験として実証実験を来年度からやる。基本的な機能、発行や流通や償還を実験する。(CBDCを)やるやらないの話は別として、走り始めて手を動かしていないとダメでしょう。やるのが決まってから始めてもダメ」(副島氏)

 この技術的な実験を踏まえて、実施を想定しているのがフェイズ2だ。個人アカウントの開設、ウォレットへのチャージ、店舗での決済まで、実際の場面でのCBDC動作を実験する。

 そのあとのパイロット実験は、フェイズ2の結果を踏まえて行う。副島氏は、この段階については慎重だ。「3つめとして、中国がやっているように、ほとんど本番と同じでスケールだけ違うものを用意しなくてはならない。これをやるという決定はしていない。CBDCをやるという結論にならなければ、3つめのステージに入ることはない」

 CBDCが本当に世の中に必要なのかを議論することが重要で、その副作用についても議論が必要だというのが、現在のスタンスだ。その上で、いざCBDCを出すと決まったら、しっかりと実現できるように運用面の課題を洗い出して対策しておく。副島氏は、「スケジュールは走りながら考えている」と、今後の見通しを話した。

 ディスカッションの中で副島氏が強調したのは、他国と比べて先を行くか遅れるかという観点ではないということだ。CBDCによって、コストを削減したり不便をなくしたりして、これまでなかったサービスを生み出し、生活を豊かにすること。これが決済インフラや金融システムの目的だという。

 「CBDCを出し合うレースをやっているのではない。レースに勝ったところが偉いわけではない。CBDCではなく、民間電子マネーを便利にしていくことのほうがいいとなるかもしれない」(副島氏)

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